大相撲に史上20組目の兄弟関取が誕生する。荒汐部屋の若元春(わかもとはる)(25)が新十両に昇進し、弟の若隆景(わかたかかげ)(24)とともに関取に。3月10日初日の春場所(エディオンアリーナ大阪)では、30人弱の十両に3組の兄弟関取がいる、珍しい光景が見られそうだ。
相撲特集:どすこいタイムズ
福島市出身の若元春は本名・大波港(おおなみみなと)。祖父に元小結・若葉山、父に元幕下・若信夫(わかしのぶ)を持つ。角界入りのきっかけの一つは高校生だった2011年3月、東日本大震災。長兄の渡(27=現幕下の若隆元(わかたかもと))が所属する荒汐部屋で三男・渥(若隆景)とともに避難生活を送り、このとき、将来的な入門を心に決めていた。
「3兄弟で力を合わせてほしい」。そんな願いを込めて荒汐親方(元小結大豊(おおゆたか))がつけたしこ名は「3本の矢」で有名な戦国武将・毛利元就(もとなり)の3人の息子の名に由来する。師匠の「大波3兄弟」評は、こう。
長男(若隆元)=「みんなをまとめるしっかり者」
次男(若元春)=「頑張りが長続きしないけど、素直」
三男(若隆景)=「勝負強い」
3兄弟がそろって関取となれば、13代井筒親方(元関脇鶴ケ嶺(つるがみね))の子で、「井筒3兄弟」と呼ばれた鶴嶺山(かくれいざん)(十両)、福薗(ふくぞの)(関脇逆鉾(さかほこ))、源氏山(げんじやま)(関脇寺尾)に続く史上2例目の快挙。筋肉質な体形が共通している大波3兄弟は、過去に例のない「3兄弟で同時関取」を夢見る。
春場所では他に英乃海―翔猿(とびざる)と双子である貴ノ富士(元・貴公俊(たかよしとし))―貴源治の2兄弟も十両にそろいそう。兄弟3組が同時に関取だった例で有名なのは、1991年九州場所から6場所にわたった若花田(3代目横綱若乃花)―貴花田(横綱貴乃花)、逆鉾―寺尾、小城ノ花(小城乃花)―小城錦。直近は、北桜―豊桜、安壮富士―安美錦、露鵬―白露山がそろった2008年夏場所だった。
ある親方は、勧誘する側から見た「兄弟」の利点を口にする。「このご時世、新弟子探しは年々大変になっている。あちこち探すより、角界入りに理解のある親御さんから2人預かれば、こんなにありがたいことはない」
今、関取を経験していない幕下以下でも10組以上の兄弟が切磋琢磨(せっさたくま)している。(鈴木健輔)
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〈関取〉 大相撲の番付で幕内と十両の力士。「名前で関所を通ることが出来る」が敬称の由来。本場所の15日間のうち、ちょんまげ姿で7番相撲を取る幕下以下の力士と違い、大いちょうを結い、土俵入りを務めた後、15日間毎日土俵に上がる。月給が出るのも十両以上の関取に限られる。