厚生労働省は22日の衆院予算委員会理事会で、毎月勤労統計の調査手法変更に関するメールを公開した。厚労省が有識者検討会での検討状況を首相官邸関係者に報告していることや、「委員以外の関係者」からの意見により「総入れ替え方式が適当」としていた結論を取りまとめ直前に変更する方針が明記されていた。野党側は手法変更への官邸関与があったとして追及を強める構えだ。
メールは厚労省の担当者と検討会座長だった阿部正浩中央大教授の間で交わされたもの。同省は阿部氏から提供を受けた。これまでの国会審議で「委員以外の関係者」は中江元哉・元首相秘書官(現・財務省関税局長)であると根本匠厚労相らが認めている。
メールによると、厚労省の担当者が2015年9月4日に「検討会での検討結果等については官邸関係者に説明をしている段階」と阿部氏に伝えていたことが判明した。検討会は8月7日、「(中規模事業所調査の対象変更は)現在の総入れ替え方式が適当」とする素案をまとめていた。9月8日のメールには、報告書案作成について「部分入れ替え方式で行えばよいのではないかと言われる可能性があるため、あえて記述しないという整理にしたい」と記した。厚労省が部分入れ替え導入に慎重だったことがうかがえる。
9月14日午後4時8分のメールは「委員以外の関係者と調整をしている中で、部分入れ替え方式で行うべきとの意見が出てきた。報告書案ではなく、中間的整理案とのとりまとめを考えている。サンプルの入れ替え方法についても『引き続き検討する』と記述する予定」と伝えていた。
野党側は、統計に関する検討状況の官邸側への報告は異例として「行為として官邸の関与があったと言わざるをえない」(立憲民主党幹部)と批判している。
22日の予算委で、姉崎猛・元厚労省統計情報部長は「9月14日午後の早めの時間」に首相官邸で中江氏と面会し、中江氏から「コストよりもちゃんと実態を把握する観点から部分入れ替えもあるのでは」と言われたと明かした。厚労省の担当者が「委員以外の関係者」のメールを阿部氏に送ったのはこの面会後の可能性が高いが、姉崎氏は「メールについては承知していない」と答弁した。