公正取引委員会は、米グーグルやアマゾンなど「プラットフォーマー」と呼ばれる巨大IT企業が不当に個人情報を集めた場合、独占禁止法を適用する方針を固めた。プラットフォーマー向けに独禁法の解釈や適用事例などをまとめた新たなガイドラインを今夏をめどにつくり、法律が禁じる「優越的地位の乱用」に当たる行為を定める。優越的地位の乱用はこれまで、企業間の取引にしか適用してこなかったが、方針を転換して個人との取引にも適用する。
巨大ITへ規制強化 公取委の背中押した独禁法の論理
公取委は、強い立場にあるプラットフォーマーが検索サービスやSNSサービスの対価として個人の情報を集めることを「取引」とみなす。そのうえで、消費者から明確な同意を得ずに情報を集めたり、集めた情報を漏洩(ろうえい)させたりするなどの不当な行為があれば、優越的地位の乱用として規制できるようにする。
今後内部での検討や有識者へのヒアリングなどを進めて、ガイドラインの詳細を詰める。1月から実施しているプラットフォーマーをめぐる取引実態調査の結果も踏まえる。プラットフォーマーと企業間の取引は従来も独禁法の適用対象となっているが、こちらもガイドラインを見直し、規制強化を検討する。
グーグルやアップル、フェイスブック、アマゾンの米4社を指す「GAFA」などプラットフォーマーをめぐっては、集めた個人情報を生かしてターゲット型広告など新サービスを開発し、存在感をさらに高めている一方、消費者の同意なく膨大な個人情報を集めているなどとして各国で批判が高まっており、日本の公取委も規制の強化を検討していた。(西山明宏)
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《優越的地位の乱用》 商慣習から逸脱し、強い立場で一方的に契約変更をするなど取引相手に不当に不利益を与える行為。主に大企業が取引先に圧力をかける行為として、独占禁止法で「不公正な取引方法」の一つとして禁止されている。