大きな災害の時には、食料の支援が届くまでに時間がかかったり、人によっては食べにくいものだったりすることがあります。それぞれの家族の事情に合わせて備えるヒントを専門家に聞きました。
「常温で保存できて、そのまま食べられるものが本当に便利だと思いました」。料理教室ベターホーム協会の講師、森田陽子さん(63)は東日本大震災を振り返る。
仙台市の自宅マンションは無事だったが、部屋中にものが散乱。水・ガス・電気も止まった。避難所は、人があふれて入れなかった。スーパーの棚はすぐに空になり、夫の同僚らが県外まで買い出しに行った。
徐々に流通が回復したものの、生鮮品はなかなか手に入らなかった。日頃、牛乳でヨーグルトを作っていた森田さんは、牛乳がないことがつらかったという。「各家庭で『これだけは欠かせない』という食品は違うので、それを考えて備えて欲しい」と助言する。
同協会は、特別な非常食ではなく、いつも食べているものを中心にした備蓄を提案している。森田さんのように、避難所ではなく、自宅で過ごせる場合もあるからだ。
近年、食品メーカーは「簡単」「時短」の商品に力を入れており、缶詰やレトルト食品の種類が豊富になった。数分でゆでられるパスタもある。同協会講師の小関彰子さん(55)は「こうしたものを組み合わせると、栄養バランスがよい食事ができます」と話す。
小関さんに、災害時にも作りやすいパスタを考えてもらった。トマトジュースとツナ缶、早ゆでタイプのスパゲティを使い、カセットコンロと鍋一つで7~8分で仕上がる。鍋は、熱伝導のよいアルミ製がおすすめという。
調理時はポリ手袋をすると食中毒予防になり、手を洗う回数も減らせる。食器はラップやホイルをかぶせて使い、洗いものを減らす。食材は、キッチンばさみで切れば、包丁・まな板を使わずに済む。
災害時は不便な生活や緊張感で食欲が落ちやすいが、栄養をとらないと体が弱ってしまう。ストック食品を見直す際には、たんぱく質やビタミンなど、栄養面も考える。好きな味の食べ慣れたものなら、のどを通りやすい。赤ちゃんや食物アレルギーのある人がいる場合は、それぞれが食べられるものを備える。
こうした食品は、しまい込むとどこにあるか分からなくなり、必要な時に出しにくい。見える所に置いて日々の料理に取り入れ、使ったら買い足す。頻繁に使わないものは、賞味期限切れに注意を。定期的に食べる日を決めるのも一手だ。(栗田優美)
■水分や油分でやわ…