米中通商協議で中国側代表の一人を務める王受文商務次官が9日、記者会見し、米国側と「互いに全ての追加関税を撤回する協議を続けている」と述べた。両国は3月中にも協議の合意に向けた首脳会談を開く検討に入っていたが、対立点は解消せず、開催は4月以降になる可能性も出ている。
通商交渉の焦点の一つが、中国側が知的財産の保護などにきちんと取り組んでいるかを監視する仕組みづくりだ。王氏は「双方向、公平、平等であるべきだ」として、米国側も監視されるべきだという見方を強調。王氏は、通商紛争の悪影響が貿易面で広がっているとの懸念を示し、その上で協議の見通しについては「希望がある」と述べた。
米中通商紛争のあおりを受けて景気が急減速する中国は、米国からの輸入拡大を表明するなど譲歩を重ね、協議の合意を急ぐ。5日の政府活動報告では、米側が危険視し、見直しを迫る産業政策「中国製造2025」に触れなかった。8日には米側が問題視してきた外資への技術移転の強制を禁じる外商投資法案を立法機関の全国人民代表大会に提出した。
こうした中、米ウォールストリート・ジャーナルは8日、合意内容を詰める前の首脳会談に中国側が尻込みしているとの記事を報じた。事前に合意内容を詰めず、首脳の話し合いで決着させることにした米朝首脳会談が失敗したことに衝撃を受けたという。
経済政策の司令塔であるカドロー米国家経済会議議長も米CNBCで、首脳会談は「3月の終わりか4月初めにはあるだろう」と述べ、時期を断定しなかった。トランプ米大統領は8日、「中国側が前向きでないといううわさがある」と記者団に聞かれたが、「それは聞いていない。うまくいっていると聞いている」と述べている。(北京=福田直之、ワシントン=青山直篤)