同居する知的障害のある弟(当時45)を殺害したとして、殺人罪に問われた千葉県船橋市の無職、斉藤陽子被告(48)の裁判員裁判の判決が8日、千葉地裁であり、岡田健彦裁判長は懲役3年6カ月(求刑懲役8年)を言い渡した。
判決によると、斉藤被告は2017年9月19日午後5時半ごろ~8時20分ごろ、自宅で弟の田村寛之さんの首をタオルやベルトで絞めて殺害した。
公判で弁護側は「長期間の介護で精神的に追い詰められていた」として、執行猶予付きの判決を求めた。これに対し、検察側は「ケースワーカーに相談するなど、他に取り得る手段はあった」と指摘していた。
判決で岡田裁判長は「許しを懇願されても首を絞め続けており、執拗で残酷な犯行」と被告を非難した。一方で「長年の介護で肉体的・精神的に疲弊し、思考狭窄(きょうさく)も影響を与えた」と量刑の理由を述べた。
両親の離婚、母の病…
「もう、誰にも迷惑をかけたくなかった。けれど、結局、自分が一番迷惑をかけてしまった」
被告は公判で、何度もそう繰り返していた。
なぜ、弟を手にかけたのか。公判で明らかになった経緯を振り返る。
被告は3人きょうだいの長女として誕生。2歳下の弟は知的障害を持って生まれた。普段は優しい弟だったが、ささいなことで暴れることがよくあり、家族は日常的に暴行を受けた。弟はそのたびに「もうしません」と泣いて謝ったが、約束は一度も守られなかった。
中学3年のとき、両親が離婚。被告は家計を助けるため、静岡県の工場に住み込みで働きながら高校に通うことを決意し家を出た。
結婚し、派遣社員として生活していた頃、弟と2人暮らしをしていた母がパーキンソン病を発症。夫とともに千葉へ戻った。アルバイトを掛け持ちしながら懸命に介護したが、母は3年前に亡くなった。
それから、夫と弟との3人での生活が始まった。弟は県内の農業会社に就職。9歳下の妹は証人尋問で、そのときの被告の様子を「姉はすごく喜び、通勤方法について弟と話し合っていた」と語っていた。
断っていた酒に再び手
だが入社後、状況は一変する。…