長崎県対馬市で2016年12月に父と娘が殺害された事件で、殺人と現住建造物等放火の罪に問われた、同市の鉄工所経営、須川泰伸(ひろのぶ)被告(40)の控訴審判決が13日、福岡高裁であった。野島秀夫裁判長は、無期懲役とした一審・長崎地裁の裁判員裁判の判決を支持し、検察側、被告側双方の控訴を棄却した。
一審判決によると、須川被告は16年12月6~7日、対馬市内で漁業の古川敬氏さん(当時65)の頭部を鈍器で複数回殴って殺害。敬氏さん宅で次女の聖子さん(同32)を同様に殺害し、ガソリンや灯油をまき、火をつけて全焼させた。一審で検察側は死刑を求刑、被告は無罪を主張していた。
控訴審判決は、▽火災現場にあったガソリン携行缶に、須川被告の掌紋が付着していた▽聖子さんが使う車のブレーキペダルに、被告宅で押収されたサンダルの足跡が付いていた――などの点を検討。「被告以外が犯人だとすると、合理的に説明することは不可能だ」と指摘し、被告側の無罪主張を退けた。
一方、犯行時の行動などから、「突発的に犯行が行われた可能性が否定できない」として計画性を認めず、死刑を回避した一審判決の判断を「不合理とは言えない」と追認した。
須川被告の弁護人によると、上告する方針。福岡高検の内藤秀男刑事部長は「判決内容を十分に精査し、適切に対処したい」とコメントした。
古川さんの遺族は「何も落ち度のない大切な家族を奪った被告がどうして無期懲役なのでしょうか。判決は到底受け入れることができません」などとコメントした。(一條優太)