2020年の東京五輪・パラリンピックで訪日外国人の増加が見込まれるなか、羽田空港を利用する人もさらに増えそうです。羽田空港のターミナルビルを運営する日本空港ビルデングで商業施設全般を担当する宮内豊久副社長(69)に、今後の施設の充実策や課題を聞きました。
――昨年末、商業施設の「THE HANEDA HOUSE(羽田ハウス)」が第1旅客ターミナル5階にオープンしました。開設の狙いは?
「世の中は、欲しい物を買う『モノ』消費から、何かを体験したり楽しい時を過ごしたりする『コト』消費へとニーズが変わってきている。羽田にはすでに物販飲食の店舗は300以上もあり、十分整っている。これに体験型施設を加えることで、羽田の魅力をさらに高められると考えた」
――体験型施設を強化した新店舗の特徴は?
「14店舗が入居していて、キーワードは『羽田で過ごす』と『カスタマイズ』だ。ビジネスパーソン向けに仕事スペースを時間や月単位で提供するレンタルオフィスや、ボクシングを体験できるフィットネスジム、ヒールの着せ替えができるパンプス専門店などを誘致した」
「スターバックスコーヒーも入っているが、単なる飲食店ではない。滑走路を一望できるラウンジスペースなど、いろいろな客席があり、気に入った席で何時間でも過ごしてもらえる。開店直後に席取りが起きているぐらい人気だ」
――羽田は黙っていても人が来る施設です。
「1日約24万人が利用するが、空港利用者が単に通過するだけになってしまうと収益基盤は揺らぐ。事業の屋台骨である商業施設の充実は不可欠だ。通過するだけでなく、空港で過ごしてもらう仕掛け作りが必要だ。ネイルやヨガなどニーズをとらえた体験型をさらに増やしていきたい」
――会社の商業施設関連の売り上げ状況は。
「会社の売上高2259億円(18年3月期)のうち商業施設は1477億円。1日4億円が売れる計算で、成功しているといえる。ただ、うかうかしていると、すぐに売れなくなる。世界を見回すと、世界一いいとされるシンガポールのチャンギ空港や、韓国の仁川(インチョン)空港など、いずれも体験型を充実させて、訪れるだけで楽しい空港になっている。羽田も世界のトップ空港であり続けるために、今回の羽田ハウスをいい実験台にして、楽しめる要素を高めていきたい」(聞き手・佐藤亜季)
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〈みやうち・とよひさ〉 1949年生まれ。慶応大卒。72年に三菱地所に入り、2007年から専務執行役員。09年からグループのロイヤルパークホテルズアンドリゾーツ社長を兼務した。16年に三菱地所を退職し、日本空港ビルデング特別顧問を経て、17年から取締役副社長執行役員