岩手県沿岸で23日、三陸鉄道リアス線が開業し、東日本大震災の津波で鉄路が途切れた宮古―釜石間(55・4キロ)を8年ぶりに列車が客を乗せて走った。この区間を含め、沿岸の163キロは一本の線路で結ばれ、「復興を後押ししてほしい」という期待が寄せられている。
リアス線、被災地163キロつなぐ 「復興進んでいる」
8年ぶり街に響く警笛と踏切音 期待膨らむリアス線開業
運休していたのはJR山田線の一部区間。JR東日本が復旧費など200億円余りを出した上で、第三セクターの三鉄に経営を移管した。三鉄はこれまで運営してきた南北リアス線と合わせ、リアス線(久慈〈くじ〉―盛〈さかり〉、計40駅)として全線で開業した。
24日からの通常営業を前に、23日は記念列車を運行した。沿線では鉄路復旧を待ちわびた人たちが大漁旗を振ったり、歓声を上げたりして新たなスタートを祝った。
三鉄の利用者は年々減少しており、1984年度の開業当初は269万人だったが、18年度は49万人。JR山田線も赤字の状態が長らく続いていた。
ただ、今年秋にはラグビーワールドカップ(W杯)の試合が釜石で開かれる。津波被害を伝承する施設も完成した。三鉄は沿線の暮らしを支えるとともに、震災学習列車を拡充するなど、観光客ら利用者の掘り起こしに力を入れていく。
「復興の象徴なんだな」
「鉄道と一緒に街が再生していると感じた」。横浜市から故郷の宮古市を訪れ、記念列車に乗った会社員の山本敬太さん(35)はしみじみと話した。18歳まで田老町(現宮古市)で暮らし、高校の3年間は三鉄で通学した。震災直後に地元に戻ると、高校から見えていた鉄橋が崩れ落ちていた。この日、元に戻った鉄橋を列車で通過した。「8年もかかったことを含めて、三鉄は復興の象徴なんだな」
ラグビーW杯の試合会場に最寄りの鵜住居(うのすまい)駅。ホームでは住民が大漁旗を掲げたり、伝統芸能の虎舞を披露したりして列車を出迎えた。駅のある地区は津波で多くの人が亡くなり、鵜住居地区防災センターでは160人以上の犠牲者が出た。センターにいて一命を取り留めた駒林ユウ子さん(69)は変わり果てた街の姿に寂しさも覚えるが、「やっと復興が始まった感じ。みんなこの日を待っていた」と笑顔を見せた。
宮古市で開かれた式典には三鉄をモデルにしたドラマ「あまちゃん」に出演した俳優・のんさんがサプライズで登場した。のんさんは「リアス線がつながって新しいドラマが起こるのだと思うと、わくわくしています」と開業を祝った。
8年間不通が続いた宮古―釜石…