仮想通貨を獲得する「採掘(マイニング)」のため、他人のパソコン(PC)を無断で作動させるプログラムをウェブサイト上に保管したなどとして、不正指令電磁的記録保管の罪に問われたウェブデザイナーの男性(31)=東京都小金井市=の判決が27日、横浜地裁であった。本間敏広裁判長は、「不正な指令を与えるプログラムに該当すると判断するには、合理的な疑いが残る」として無罪(求刑罰金10万円)を言い渡した。
男性は2017年10月~11月、自身が運営するウェブサイトに仮想通貨「モネロ」をマイニングするためのサービス「コインハイブ」のプログラムを仕込み、無断で閲覧者のPCにマイニングをさせようとしたとして摘発された。昨年3月に略式起訴されたが、男性が不服とし、正式裁判に移行していた。他にも、少なくとも4人が略式起訴されている。
公判の主な争点は「コインハイブ」がウイルスにあたるかどうかだった。サイトに仕込んだプログラムが、閲覧者のPCに無断で指示を送る点は、ネット広告と同じだが、検察側は「マイニングがおこなわれていることは、閲覧者のPC画面上に表示されず、認識できない」などとしてウイルスにあたると主張。弁護側は「仮に不正だとすれば、多くのプログラムが犯罪となる」として無罪を主張していた。
判決は、コインハイブが閲覧者の同意を得ていないことなどから、「人の意図に反する動作をさせるプログラムだ」と認定した。一方で、①閲覧者のPCに与える消費電力の増加は広告と大きく変わらない②当時、コインハイブに対する意見が分かれており、捜査当局から注意喚起や警告もなかった――などと指摘。「社会的に許容されていなかったと断定できない」として、ウイルスには当たらないと結論づけた。(飯塚直人)