(選抜高校野球 筑陽学園3―2山梨学院)
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29日の2回戦で山梨学院が攻守ではつらつとした動きを見せた。
精密なチームへ。変化のきっかけは、昨年8月、高校野球の世界で「名参謀」と呼ばれてきた小倉清一郎さん(74)を臨時コーチに招いたことだった。
小倉さんは、横浜(神奈川)の部長やコーチとして甲子園で春夏合わせて3度の優勝を果たし、松坂大輔選手(中日)や筒香嘉智選手(DeNA)ら球界を代表する選手を育てた。2014年に勇退し、全国で野球を指導して回っている。
昨年8月末、山梨学院での指導が始まった。変化は守備面に出た。「いろいろなパターンをとことん練習した」と遊撃手の小吹悠人君(2年)は言う。
指導は細かい。「走者二、三塁で中堅後方に飛球が上がったとき」など状況を設定し、動きを確認。できるまで練習を繰り返す。重盗をしかけられたとき、三塁線へ長打されたとき……。どのポジションの選手がどう中継、カバーに入るのか。選手は新しい決まり事をミーティングで共有し、練習で体にたたき込んだ。効果はすぐに表れた。昨秋の関東大会では、1試合平均1・7失点。大会4強で最少だった。
29日の筑陽学園戦では連係プレーは少なかったが、小吹君は「弱いゴロで前に出て、イレギュラーする前に捕るという練習を繰り返してきた。今日の試合は、一歩目の出足が良く、ゴロをうまくさばけた」と話す。
競る展開の中、攻撃で精密さが出た場面もあった。2点を追う八回無死一、二塁。「もともとバントは得意じゃない」という高垣広大君(3年)が初球で絶妙のバントを決め、得点につなげた。「相手の守備を視野に入れる」「バットの芯を外す」。指導されたことを練習で何度も確認し、実践した。
小倉さんによる個別の指導も選手を変えた。
1回戦で大会最多タイの1試合2本塁打を放った主砲の野村健太君(3年)は小倉さんの指導のもと、年明けから打撃フォームを改造した。
バットを構える際、重心をはじめから軸足に少し傾けておくことで振り遅れが減った。見逃しが多かった「最初のストライク」も小倉さんに指摘されて意識して狙うようになった。高校通算40本目となる1回戦の八回の本塁打も初球だった。
2回戦は1点差の九回に2死満塁まで追い上げたがあと一打が出なかった。吉田洸二監督(49)は「50歳を前に指導者も怒られながら大変勉強させてもらっている。1点の重さを痛感した試合だった。夏に向けてまた鍛え直したい」。(野口憲太)