平安時代の創建以来、歴代天皇の即位の際に開帳されてきた秘仏が、京都・祇園近くの古刹(こさつ)・長楽寺(ちょうらくじ)(京都市東山区)に伝わっている。皇太子さまが天皇に即位する5月1日、秘仏を納めた厨子(ずし)の扉が開かれる。事前の取材で写真撮影も許されなかった秘仏とは、どんな像なのだろうか。
春の京都非公開文化財特別公開
寺は、八坂神社や円山公園の奥の山麓(さんろく)にひっそりとたたずむ。古くから洛中随一の景勝地として西行の「山家集(さんかしゅう)」や「平家物語」に登場し、源平合戦の後に安徳(あんとく)天皇の母、建礼門院(けんれいもんいん)がこの寺で髪を落としたとされる。
本堂に安置された色彩も鮮やかな大きな厨子に、本尊の秘仏「准胝(じゅんてい)観音像」が納められている。
寺伝では、寺は805年、桓武(かんむ)天皇(在位781~806)の勅命で、天台宗を開いた最澄(さいちょう)(767~822)が創建。本尊は最澄が自ら刻んだ像とされる。別の記録によれば、平安時代の宇多(うだ)天皇の念持仏とされ、清水寺の十一面千手観音などと並んで「都の七観音」の一つとして崇敬されてきた。寺伝では、歴代天皇の即位や厄年に勅使の立ち会いのもとで開帳される「勅封の秘仏」とされてきた。前住職の牧野素山(そざん)さん(79)は「勝手に開けると目がつぶれるという戒めが、代々の住職に伝えられています」と話す。
昭和から平成への代替わりでは…