新元号「令和(れいわ)」を選ぶ選考過程は、決して賛成一色ではなかった。衆院議長公邸で1日午前に開かれた衆参両院正副議長への意見聴取で、赤松広隆衆院副議長が推したのは、「久化(きゅうか)」と「広至(こうし)」だった。「元号らしく、みんなが書けて簡単に読める」。郡司彰参院副議長も「元号が特定の季節を指すのはどうか」と、梅の花の歌の序文からとった「令和」に異論を述べた。
【特集】「令和」へ
続く全閣僚会議でも「令和」以外の案を推す声があったと出席者は証言する。閣僚の一人は、杉田和博官房副長官が典拠について「国書が3、漢籍が3」と紹介したことで、「国書案のどれにするかという雰囲気になった」と感じた。
「企業名やお名前に使われている場合があるなど、一般的な説明があった」。懇談会メンバーの山中伸弥京大教授は終了後、記者団にそう明かした。
三つの国書案のうち古事記が典拠の「英弘(えいこう)」、日本書紀と漢籍が典拠の「広至」は、「ひでひろ」「こうじ」と人名でもよく使われる読み方ができる。新元号決定後、調査会社「東京商工リサーチ」は、国内約317万社で「令和」を冠した企業はゼロと発表した。政府が懇談会で「令和」に賛同が集まりやすい説明をした可能性がある。
ところが、1日午後にNHKと民放の番組をはしごした安倍晋三首相が繰り返したのは、国書案と「令和」にいかに多くの支持が集まったかだった。
「国書を典拠にすべきだという…