4月に囲碁の史上最年少プロ棋士となった仲邑菫(なかむらすみれ)初段(10)の公式戦初対局が22日、大阪・梅田の日本棋院関西総本部であった。同じく今春棋士となった大森らん初段(16)に敗れ、ほろ苦い黒星デビューとなった。
対局は考慮時間の短い早碁棋戦「竜星戦」の予選。通常なら大部屋で打って記録係もつかないが、大部屋を特別対局室に模様替えし、記録係もつけて対局者を迎えた。押し寄せた報道陣は約40社100人。ドイツのテレビ局など海外メディアの姿もあり、日本棋院の広報担当者は「経験のない盛り上がり」と言う。
午後2時半、身長126センチの仲邑初段と159・5センチの大森初段が向かい合い、対局開始。先手番の仲邑初段が第1着を打ち下ろすと、ぐるりと囲んだカメラの放列から一斉にシャッターの連写音が鳴り響いた。
与えられた考慮時間は各1時間あったが、仲邑初段は序盤から相手が打つと即座に打ち返す。しかし中盤に逆襲されて劣勢に立たされると、残り時間はみるみる減って、最後は秒読みに追われた。逆転のチャンスは訪れず、174手で投了した。
対局後、仲邑初段は硬い表情で会見室に現れた。「どんな対局でしたか?」の質問には「緊張してうまくいかなかった」。「いまのお気持ちは?」には「悔しい」。しかし目標を聞かれると、これまでの取材と同じく「女流タイトルを取って、世界で戦いたい」と、きっぱり言い切った。
仲邑初段は現在10歳1カ月で、これまで藤沢里菜女流三冠(20)が持っていた最年少対局記録(11歳8カ月)を、9年ぶりに更新した。(高宮正尚、大出公二)