愛知県一宮市出身の将棋の豊島将之二冠(28)が、第77期名人戦七番勝負(朝日新聞社、毎日新聞社主催)で佐藤天彦名人(31)に初挑戦する。愛知県出身で棋界最高峰の名人に上り詰めた棋士はいない。名人戦は4月10日に東京で開幕する。
杉本昌隆八段の棋道愛楽
名人への道 藤井聡太
3月1日、トップ棋士10人による名人戦A級順位戦の最終9回戦計5局の一斉対局が静岡市で指された。名人への挑戦権やA級の残留争いが悲喜こもごものドラマを生み、日付が変わるころまで戦いがもつれることから「将棋界で一番長い日」と呼ばれている。
7勝1敗の首位で迎えた豊島二冠は、久保利明九段(43)と対戦。2敗で追う広瀬章人竜王(32)と羽生善治九段(48)の2人が直接対決し、豊島二冠が敗れると、2年連続のプレーオフが決まる状況だった。
昨年、名人戦第5局が指された名古屋・大須の万松寺で午後6時に大盤解説会が始まった。豊島二冠が積極的に仕掛け、徐々にリードを奪う。
午後10時半を回ったころ、解説役の木村一基九段(45)は両者の自陣の囲いの堅さを「(豊島二冠の)名古屋城と(久保九段の)野原の一軒家」と例え、「間違わなければ、豊島さんの勝ちでしょう。でも、久保さんも簡単には(勝負を)投げませんよ」。
他の対局が次々と終局するなかで唯一、日付が変わっても両者のにらみ合いが続いた。決着は2日午前0時24分。粘りに粘っていた久保九段が投了し、最後まで残って観戦していた約100人が佐藤名人への挑戦権を得た豊島二冠を拍手でたたえた。木村九段は「結果だけを見れば大差だったが、中身は僅差(きんさ)の勝負だった」と解説会を締めくくった。
豊島二冠は5歳まで一宮市で暮…