東京大学の西林仁昭教授の研究チームが、水と窒素を原料にアンモニアを作り出す方法を開発した。24日付で英科学誌ネイチャーに発表した。身近にある水を原料に使い、環境への負荷が少ない常温、大気圧で合成できたのは世界初という。
アンモニアは合成繊維や化学肥料などの原料として広く使われ、生産量は世界で年約1・5億トンにのぼる。燃料電池の燃料である水素を取り出せ、将来的には石油を代替する燃料になりえるとの期待もある。
現在は、水素ガスと窒素ガスを原料に、高温(400~650度)、高圧(200~400気圧)のもとで合成するハーバー・ボッシュ法で大量生産されている。天然ガスなどから水素ガスを作る過程で大量のエネルギーを消費する上、温室効果ガスの二酸化炭素を出す。アンモニア生産は世界のエネルギー消費の1・2%を占めるとの推計もある。より環境への負荷が少なく、高効率の手法の研究が進められている。
今回、水を原料にできたのは、チームが金属のモリブデンを含む触媒と、有機合成の試薬として使われるヨウ化サマリウムの溶液を用いる方法を考案したためだ。触媒の開発には自然界の細菌によるアンモニア合成に使われる酵素を参考にした。触媒と溶液、窒素を入れた容器に、水を入れて混ぜると、アンモニアが大量に発生した。詳しいメカニズムは分かっていないが、水素ガスを作る過程がなく、二酸化炭素の排出が少ない。西林さんは「10年後をめどに、実用化できれば」と語る。
実用化には、連続して効率良く…