「働き方改革」の波が、国防の最前線にも広がっている。特に海上自衛隊は、中国や北朝鮮の艦船の動きに目を光らせるなど任務が増えている一方で、少子化による隊員確保の厳しさが著しい。人繰りと船繰りが課題となるなか、少人数で効率的に任務にあたる「省人化」に力を入れている。
沖縄の宮古海峡を抜けて太平洋へ出る中国軍艦への警戒、北朝鮮の船舶が洋上で違法に物資を積み替える「瀬取り」の監視……。海自によれば、ここ数年で任務が増え、訓練や休養が不足しがちだという。
安倍政権が掲げる「自由で開かれたインド太平洋構想」のもとで「プレゼンス」が重視されていることも、任務増に拍車をかける。いずも型護衛艦は昨年から、南シナ海やインド洋へ約2カ月間の長期訓練を定例化し始めた。
こうした事態に対応するため、防衛省は昨年末に策定した防衛計画の大綱で、「省人化」を狙った施策を盛り込んだ。
12隻にのぼる哨戒艦の初導入は、そのひとつだ。乗員は1隻30人程度。従来の護衛艦は1隻200人前後にのぼり、いずも型ならば約470人必要になる。
哨戒艦は、対空戦や対潜戦にも対応する護衛艦とは異なり、役割を警戒監視に特化する。戦闘に使う砲などは最小限に絞り込み、射撃担当者も不要となる。「見張っているぞと相手に知らしめるだけなら哨戒艦で十分。それ以上の事態になって初めて護衛艦を出せばいい」(海自幹部)
また、新型護衛艦22隻には「省人化」と「複数クルー制」という二つの工夫を施す。
省人化では、消火装置を自動化したり、管制装置を1カ所に集約したりして、これまでの半分の100人程度で運用できるようにする。
複数クルー制では、従来のように隊員を特定の1隻には所属させず、3隻に4クルーを置くような勤務形態を取り、1クルーは休む。艦内のレイアウトを共通にし、どの艦でも勤務できるようにする。
所属する艦艇をわが家のように大事にする「愛艦精神」が損なわれるとの懸念の声も隊内にはあるが、「船を休ませず、人は休ませる」運用へ転換する。
さらに、今後5年で海自は艦載…