大津市南部のあちこちで、使われなくなった有線放送の電柱が放置されている。老朽化で傾いたり、通行の妨げになったりと住民生活にも影響が及んでいる。住民側は撤去を要望しているが、インフラの「負の遺産」の後始末は思うように進んでいない。
瀬田川の東側、新旧の住宅やマンションが立ち並ぶ大津市の大江地区。狭い市道脇に老朽化した木柱はあった。高さ5メートルほど。NTTの電柱と並んでいるが、道路側に大きく曲がっていた。
今は使われていない「湖南有線放送」の木柱だ。1973年に放送が始まり、電話や地域情報の伝達手段を担ってきた。「湖南有線放送農業協同組合」が運営し、放送エリアは瀬田や田上など市南部の7学区。電線の全長は計97キロ。2001年に放送は休止したが、木柱やコンクリート柱などは処分されず、あちこちに放置されたままだ。
「木柱は根腐れはしていないが、もう10年はもたない」。大江地区を含む瀬田学区の内田一豊・自治連合会長(79)は不安な表情を浮かべた。木柱の電線は道を挟んで向かいの倉庫や住宅につながっている。「柱に加え、電線も撤去しないといけない」と内田会長。
5分ほど歩くと、瀬田小学校の通学路に出た。車がすれ違いできないほど狭い。緑色に塗装された歩道上にも、つい最近まで高さ10メートル近い湖南有線の電柱が残され、子どもたちは電柱をよけて車道にはみ出て通学していたという。内田会長らが市に何度も撤去を要望し、4月上旬にようやく撤去されたという。
市によると、大江地区だけで湖南有線の木柱と電柱が150本近く(11年時点)あるという。内田会長の元には年1、2回、「危ないからどけて欲しい」との声が寄せられるという。内田会長は「通学路の電柱は撤去されたが、まだまだ他にもたくさん残っている」と心配している。
「木柱を何とかして欲しい」。…