イランが核合意の一部履行停止を表明し、核開発の再開も辞さない姿勢を示したのを受け、合意の当事国でもあるロシアと中国は、それぞれ米国を批判した。昨年5月に一方的に合意から離脱したトランプ政権がイランを追い込んだとした。
ロシアのラブロフ外相は8日、モスクワでイランのザリフ外相と会談し、「核合意を巡る状況は、米国の無責任な行動のせいで受け入れがたいものになっている」と指摘。イランが決定した合意の一部の履行停止は「合意の枠内だ」と述べ理解を示した。
さらにラブロフ氏は共同会見で、核合意でイランが核開発を制限する引き換えに約束された経済的な見返りを実現させるため「欧州のパートナーを説得する」と述べ、イランと米国の間で板挟みの英仏独に圧力をかける姿勢をみせた。
中国外務省の耿爽副報道局長は定例会見で、イラン側から履行停止に関する説明が事前にあったことを明かしたうえで「核合意は国際的な核不拡散体制と中東の平和と安定に不可欠だ。合意を維持し、義務を履行することは各国の共同責任だ」と述べた。
イラン産原油の最大の輸入国でもある中国は、米国が昨年、制裁を再発動した際も一貫して反対を表明。「義務を果たすイランの努力を高く評価する」とし、原油輸入を続けてきた。
耿氏は「中国は、これまで緊張を高める米国のやり方に遺憾を表明してきた」とし、「合意が維持されるよう各国に働きかける努力を続ける」と繰り返した。
一方で、イランと敵対するイスラエルのネタニヤフ首相は8日、「我々は、イランが核兵器を手に入れることを認めない」と述べた。イスラエルは、イランの核開発を警戒してきた。昨年3月には、過去にシリアの原子炉を空爆したことを認め、イランを牽制(けんせい)。核合意についても「イランに核兵器のノウハウを隠し持たせるものだ」として、合意離脱したトランプ政権と歩調を合わせてきていた。
菅義偉官房長官は8日の記者会見で「イラン政府の決定は、核合意からの離脱ではないと言及されていることに留意をしている。引き続き、情勢を注視していきたい」と述べ、当面はイランの対応を見守る考えを示した。(モスクワ=石橋亮介、北京=冨名腰隆、エルサレム=高野遼)