米海軍佐世保基地(長崎県佐世保市)の警備を担う日本人従業員が今月、米軍側の指示で、拳銃を携行したまま基地外の公道を歩いて移動していたことがわかった。事前に情報を得た防衛省が、銃刀法違反にあたるとして数回にわたり米側に中止を求めていたが、実施されていた。
日米地位協定は、日本人従業員が米軍施設内で銃を携行することは認めている。だが防衛省によると、施設外では認められていないという。
同省によると、米海軍佐世保基地の日本人警備員は5月1~9日、拳銃を持ったまま、施設と施設のあいだを通る幅十数メートルの市道を複数回横断した。実弾を装塡(そうてん)していたかどうかは確認中という。
従業員は事前に、法令違反にならないか懸念を示したが、米軍側は問題ないと主張。日本人従業員らでつくる全駐留軍労働組合(全駐労)長崎地区本部は4月19日、「基地外で拳銃を携行する業務が行われる可能性がある」と防衛省に通知した。
同省は在日米軍司令部に中止を求め、「現地に確認して、中止を指示する」との回答を得ていた。
しかし今月7日、銃の携行が行われたことが判明。同省は同日、再び口頭で中止を求めたが、米側は続けた。これを受け、防衛省は8日に文書でも求めたが、なお止まらず、9日には外務省も米国大使館にメールなどで要請した。中止が確認されたのは10日午前。以降は、従業員が銃を米軍に預けて、公道を車で移動する運用に戻ったという。
防衛省労務管理課の担当者は「日米地位協定違反で、銃刀法違反にも当たる。再発防止に向け米軍側と協議する」と語った。警察庁との調整も検討しているという。
在日米軍をめぐっては2008年、沖縄県の米海兵隊基地の警備をしていた日本人従業員が実弾入りの拳銃を携行したまま基地外を移動していたことが発覚。政府が米側に再発防止を求めていた。