読売テレビ(大阪市)は15日、報道番組のコーナー企画で一般人に性別を確認した問題について、同局の担当プロデューサーが事前に2回にわたってVTRを見ていながらチェックが働かず放送に至った経緯を番組内で明らかにした。中谷しのぶキャスターらが改めて謝罪した。
「これを見て震えている人がいる」 だから私は声上げた
10日に放送した関西ローカルの「かんさい情報ネット ten.」で性別を確かめるためにお笑い芸人が一般人の体に触れたり、保険証を確認したりするシーンを流した。15日の放送によると、ロケは4月16日に大阪市淀川区の阪急十三(じゅうそう)駅周辺であり、26日と5月3日に同じプロデューサーが立ち会ってVTRをチェック。出演した一般人の承諾を得ているかは確認したが、社会的影響や人権配慮には思いが至らなかったという。同局の山川友基(ともき)・解説委員は「ダブルチェックにはなっていなかった」と述べ、「差別を助長することになるかもしれないことへの配慮が大きく欠如していた。ご厚意で取材に協力してくださった方々に、実害をおよぼすような負担をかける事態になってしまいました」と頭を下げた。
このコーナー企画を生放送中に批判した番組コメンテーターで作家の若一光司(わかいちこうじ)さんも同番組に出演。「傷ついている方がいるだろうと容易に想像がついた」と声を詰まらせ、「報道番組としては、差別や偏見を助長することはしてほしくなかった、止めたかったというのが、私の率直な思いです」と語った。
取材経験から「自分の性が一般的でないということによって、差別を受けたりいじめを受けたりして、自殺された方もたくさんおられます」と若一さん。「性的少数者の方がこれを見ていたら、本当に心を痛めるだろうな、街でこんなことをされるかもしれないと、震えておられるだろうなと。(取材を受けた)ご本人が納得していたとしても、そうでない受け止め方をする性的少数者、視聴者もいるだろうと思いました」と振り返った。(杢田光)