トランプ米政権が、日本と欧州連合(EU)に対して自動車の対米輸出制限を求める方向だと、米ブルームバーグ通信が15日報じた。輸入車の関税引き上げは先送りするが、その代わりに、数量規制などの輸出制限で半年以内の合意をめざすという。トランプ氏が週内にも大統領令に署名する見込み。日本は輸出制限はできないとの立場で、日米貿易交渉の大きな火種になる可能性がある。
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安全保障への脅威を理由に検討してきた輸入車や自動車部品への追加関税について、米政権が発動を判断する期限が18日に迫っていた。関税引き上げは自動車業界を含め米国内にも異論が根強く、報道によると、判断を最大180日先延ばしする方針。その見返りとして、米国への輸出台数などに上限を設けたり、なんらかの制限を加えたりすることへの同意を日欧に求める方向だという。
米政権は、輸入車の流入が米国の自動車生産を脅かしているとの認識で、大統領令の草案は「米企業の研究開発投資が遅れて技術革新が弱まり、国家安全保障を脅かしている」と指摘しているという。
日米貿易交渉は自動車や農産物などの物品分野での早期妥結を目指している。日本側は協議中は輸入車関税を発動しないとトランプ氏に確認を取ったとしているが、米政権は、輸入制限もカードに加えることで、大幅な譲歩を迫る戦略とみられる。
メキシコとカナダは昨年、北米自由貿易協定(NAFTA)に代わる新たな貿易協定「米・メキシコ・カナダ協定(USMCA)」で、自動車輸出の数量規制につながりかねない条項をのまされている。(ニューヨーク=江渕崇)