敗戦10年目に発足し65年になる自衛隊。東日本大震災への対応などで国民の信頼が増す一方、安倍政権で政治との距離もぐっと縮まり、官邸には自衛隊制服組の出入りが目立つ。制服組トップの統合幕僚長を先月退任した河野克俊さん。安倍晋三首相と同い年で、在任は歴代最長の4年半に及んだ。制服を脱いだ今、聞いてみた。
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――統合幕僚長の在任中に物議を醸したのが、改憲に関する発言です。2017年5月の日本外国特派員協会での講演で、自衛隊を憲法に明記するという安倍首相の主張に関する質問に「非常にありがたい」と答えたことが、政治的行為を制限される自衛官として不適切だと批判されました。
「政治問題なので答えられない、と言えば安泰でしたが、総理が言われる憲法9条の問題の当事者は自衛隊で、避けて通れません。メディアの向こうには国民がいる。質問されて、当事者である私が黙り込めば、顔の見えない自衛隊じゃないかと思いました」
「ただし統合幕僚長として言えば自衛隊の公的見解になる。政治的な制約は十分承知していますから『一自衛官として、自衛隊の根拠が憲法に明記されるなら非常にありがたい』と気持ちを言った。憲法ですっきりしてもらえば隊員の士気も上がる。ぎりぎり国民に言える線だと計算しました」
――憲法との関係がわかりにくい自衛隊を単純に書き込んですっきりするでしょうか。改憲の是非や内容について国民に合意がないのに、首相発言を受けて自衛隊に「ありがたい」改憲だと言うのは政治との癒着ではないですか。
「総理の意見に統合幕僚長として賛成と私が言ったなら、その通りだと思います。でも、国民的議論の末に自衛隊が憲法に明記されるならありがたい、という一自衛官としての気持ちすら言えないのは健全な社会じゃないと思う」
「暴走した旧軍と同じで自衛隊も性悪だからない方がいい、という55年体制下のような違憲論なら論理的にはわかる。でも自衛隊への信頼がここまで高まっても違憲という憲法学者は多いし、違憲だがいらなくなるまで働いてくれという政党もある。そういう違憲論には非常に無理があります」
――生まれは自衛隊発足の年で…