小学生の将来つきたい職業ランキングで上位に挙がる「ユーチューバー」。生身の人間が体を張った動画投稿が人気だが、これをCGやイラストのキャラクターに置き換えた「バーチャルユーチューバー」が注目を集めている。今年デビューした伊達あやのは「2世タレント」という設定。「母」は大手芸能事務所のホリプロから1996年に登場し、元祖バーチャルアイドルと呼ばれた伊達杏子だ。
ところが、この「親子」、見た目がまったく違う。
大きな瞳など、かわいらしくデフォルメされた典型的なアニメキャラクター風の「娘」に対し、「母」は「とにかくリアルを目指した」とホリプロ社長の堀義貴さんが振り返るように、目はそこまで大きくなく鼻もはっきり描く。
当時はアニメやゲームが人気といっても一部のファン層に限られ、世間に受け入れられるには現実さながらのリアルさが必要との思いがあった。ところが「やればやるほど生身の人間はすごいと思い知らされた」と、自然な表情の作り込みなどに難航。「テレビ局を回ってバーチャルアイドルと説明しても全く理解されなかった」とリアルとバーチャルの間の壁は高く、話題を集めた割には人気はいま一つだった。
2000年代半ばのインターネット上でも現実の生活が充実している人々をやっかむ「リア充」というスラングがはやったように、リアルと非リアルは、対立的な空間と考えられてきた。非リアルを突き詰めた先は、映画「マトリックス」(1999年)で描かれたような、現実さながらの仮想空間に没入し、身体性を失った世界と思われた。しかし、実際はどうなったのか。
東京都在住の学校事務職員・近…