9月開幕のラグビーワールドカップ(W杯)。舞台の一つとなる、熊本市の熊本県民総合運動公園陸上競技場の芝は青々と輝く。選手の最高のパフォーマンスを引き出したいとこだわる自慢の天然芝だ。この競技場から、熊本地震からの復興の姿を世界に発信したいと関係者は意気込む。
2017年6月、熊本で初めて開催されたテストマッチ(国代表同士の試合)が日本対ルーマニア戦だった。激しいスクラムやタックルが繰り広げられた。それでも芝は、はがれなかった。試合後の会見で日本代表のリーチマイケル選手は「芝が、今まで代表をやった中で一番良かった」と絶賛した。
「自信になりました」。競技場の管理と運営を担う県スポーツ振興事業団の小山賢太郎さん(40)は言う。近年は天然芝に人工芝を混ぜて管理が比較的簡単な「ハイブリッド芝」の導入が各地で進む。だが、小山さんは一貫して天然芝を使う。管理の手間はかかり、費用もかさむが、転倒時の衝撃を和らげる。スパイクもよくかみ、スクラムを組む時もステップを切る時も、最高のプレーができると考えるからだ。
芝生の管理に携わり始めたのは12年。「自然が相手で難しい仕事です」と言う。天気予報や気圧などを見て、散水の時間や量を決める。踏まれて荒れた芝生で芝くずを拾い、砂を入れて回復を待つ。W杯担当となった17年以降、現場作業は減ったが、今も毎朝、芝の状態を確かめる。
小山さんはもともと陸上選手。熊本でW杯開催が決まった際も、「大変になるだろうな」と、どこかひとごとだったという。
だが、当時の上司、坂田礼司さ…