シャープが、インターネットにつながる家電の普及を目指し、異業種に提携を呼びかけている。様々な家電の利用状況がスマートフォンから確認できるアプリを開発。これを使い、各社のサービスに役立ててもらう。つながる家電の拡大と、提携先からの収入増が狙いだ。
シャープが20日発表した新サービス「COCORO(ココロ) HOME(ホーム)」。アプリで利用状況が分かるのは、テレビ、冷蔵庫、オーブン、洗濯機、エアコンなど、インターネットに接続できる「スマート家電」だ。人工知能(AI)を使って、使い勝手を高める。
家を出る前にシャッターを閉め、テレビとエアコンを切る習慣がある利用者には、一括でスマートフォン上で電源をオフすることもできる。
これだけならライバルも似たような家電を出しているが、シャープのサービスが違うのは、このシステムを他社にも開放した点だ。シャープと提携した他社製品も操作できる。利用状況を分析して、離れた場所に住む親の「見守り」にも使えるという。
シャープは今回、関西電力とKDDI、セコムとの提携を発表。新サービスの開発を進める。また、複数のスーパーとも提携に向けた協議を始めているという。例えば、電子レンジが「最近は牛肉を使った料理が多い」と判断した情報をもとに、近所のスーパーが牛肉の特売日を通知する。来年までに提携先を50社に増やす方針だ。
シャープは他社に先駆けてスマート家電の開発に取り組んできた。テレビや洗濯機など国内メーカーでは最も多い272製品を「スマート」化したが、便利さが伝わらず、売り上げ増には結びついていない。機能が単純で、より安い家電を選ぶ傾向も強いからだ。
長谷川祥典専務執行役員は「モノとネットがつながる『IoT』の世界がもっと早く広がると思っていた。ユーザーに価値を伝えられていなかったのは我々の努力不足。外部企業との連携で利便性を高めて販売を増やしたい」。
また、システムを使う会社から利用料を徴収し、シャープにとって新たな収益源とする考えだ。
課題は、利用者の生活情報をどう守るかだ。提携先にとっても、顧客情報の取り扱いをめぐる、難しい問題が残る。(福山亜希)