(科学力)
地球温暖化や少子高齢化といった社会や経済の課題を解決する革新的な技術を生み出すイノベーション。イノベーションを起こせば企業の収益は増え、結果的に税収増につながるとして、国の成長戦略の柱と位置づけられている。大学にはイノベーションのベースとなる基礎研究が期待されているが、論文の生産性の低下が指摘され、「学問の府」への風当たりが強まっている。
発端は昨年6月に政府が閣議決定した「統合イノベーション戦略」だ。この中で、国立大学は「論文の生産性」「産学連携」などが十分といえず、改革が急務とされた。特に問題なのは財源。法人化以後も民間資金などの獲得が少なく国費への依存度が高く、財源の多様化が必要と指摘された。文部科学省も今年、大学改革案を相次いで発表。研究人材や資金、環境などの改革を通じて「絶えず新たなイノベーションを生み続ける社会」に向かって大学を改革していくとうたっている。
国が大学に期待するのはイノベーション、すなわち経済政策に協力する「装置」としての機能だ。
これに対し、国立大学協会は昨年来、国の補助金を回復させるよう要望している。大学は学問を通じて世界に貢献し、教育を通じて人材を社会に送り出す「公共財」であるから、税金で支えられるべきだという主張だ。
こうした中、国立大学に対する規制緩和も進みつつある。今月には国立大学法人法が改正され、一法人が複数大学を経営する「アンブレラ方式」が可能になった。少子化の逆風の中、教育と研究力の向上に向けて、理想とする大学像を大学が自ら模索する時代に入っている。
新たな時代の国立大学はどこへ向かうべきか。学問論、科学技術政策が専門の宮野公樹・京都大准教授に聞いた。
論文は「どれだけ書いたか」ではない
――国立大学改革をめぐって国…