26日に終わった陸上の関東学生対校選手権(関東インカレ)。地域インカレではあるが、ユニバーシアードや世界選手権をめざす選手たちが目白押しで、レベルは高い。そんな大会で、東京大学の女子選手が、東大初の女子の表彰台まであと一歩に迫った。
自己ベスト更新も
25日、女子三段跳び決勝。東大4年生の内山咲良は最初にいきなり12メートル42を跳んだ。1回目の跳躍を終わって2位の好記録だ。2回目はさらに伸ばして12メートル47。その後、昨年までこの種目を2連覇している剱持クリア(筑波大)に12メートル63を跳ばれて抜かれたが、まだ3位。このまま順位を守れば、表彰台だ。
東大の陸上部は「陸上競技部」ではなく「陸上運動部」という。創設は1887年(明治20年)ごろとされる長い歴史をもつ。しかし、現在まで女子選手の活躍は目立たず、現在も部員は10人に満たない。もし、内山が表彰台に立てば画期的な出来事になる。
「このままだと、きっと抜かれるな」と思いながら迎えた最後の6回目。自分の直前の跳躍順だった4位の日体大の選手に12メートル63を跳ばれた。「記録のアナウンスで抜かれたのは分かりました」。自分の最後の跳躍。「思い切って跳ぶしかない」と助走路に立った。自己記録を1センチ上回ったが、12メートル57。目の前の表彰台が消えた。
4年の内山にとって、しかし、この関東インカレは「最後のチャンス」ではなかった。なぜなら、彼女は6年制の医学部生だから。
幅跳びからの転向に「確信」
東京・筑波大付高3年のときには走り幅跳びで全国高校総体にも出たが、予選落ち。「やり残したことがある」と感じ、陸上をやめようとは思わなかった。翌春、東大の理科3類に合格した直後、通っていた塾で陸上を続けると宣言した。
陸上運動部に入っても、しばらくは走り幅跳びを続けていた。転機は3年生の7月。四大戦という対校戦で、三段跳びに出たら11メートル75。思いのほかいい記録が出た。今春の記録会で関東インカレの参加標準記録を突破したあとのゴールデンウィーク中の記録会で“突然変異”が起きた。
1回目の11メートル73からどんどん記録が伸びて、6回目には12メートル56。「あとで動画を見ても、明らかに動きが変わってました。踏み切りに入るときのスピードが速くなってました」。あまりの伸びに自分でも半信半疑だったが、関東インカレの予選で12メートル49の一発通過。確信をもてた。土壇場で表彰台は逃したが、「初めてのインカレにしては、悪くないと思いました」
5年生からは病院での実習も始まるが、競技は続けるつもりだ。「まだスタートラインに立ったばかりなので」。日本選手権のような、さらにレベルの高い大会で戦いたい。そして来年の関東インカレの表彰台は? 「願わくば……でも周りの方も強いので、もっと記録を伸ばさないと」。次にめざすのは秋の全日本インカレだ。(酒瀬川亮介)