学校法人森友学園(大阪市)をめぐる国有地売却など一連の問題のキーパーソンとされる前理事長の籠池泰典被告(66)は、報道陣の前で俳句を披露することでも注目されてきた。国などの補助金をだまし取ったとされる詐欺罪などの公判があった31日、大阪地裁前で読み上げた一句は――。
午前9時半ごろ。地裁前に報道陣が待ち構える中、黒のスーツにネクタイ姿の泰典被告は妻諄子(じゅんこ)被告(62)や弁護人らとともに大阪地裁に入った。
検察側は両被告が小学校を建設しようと、工事代金を水増しした虚偽の契約書を設計業者に作らせるなどして国の補助金約5600万円をだまし取ったなどと主張。泰典被告は大半の起訴内容について無罪を主張している。この日午前10時から始まった公判では、設計業者の経営者が検察側証人として出廷した。
経営者は被告席に座る両被告の前で、「多く補助金をとれないか」「ぼったくろう」などと両被告から言われ、工事代金を増額して申請したと証言。泰典被告は時折弁護人と話したり、裁判資料を見たりして真剣な表情で耳を傾けていた。
昼休みなどを挟み、長時間にわたった尋問が終わった後の午後6時過ぎ。泰典被告は地裁の庁舎から姿を現した。そして地裁前で待ち構えた報道陣に、朗々とした声で一句をひねり出した。
「たそがれし 背徳の人に 五月風」
報道陣に「意味は?」と聞かれると、泰典被告は「今日の証人のこと」とぼそっと言い、満足げな表情を浮かべつつ手を挙げて、大阪地裁を後にした。
泰典被告は今年3月の初公判冒頭にあった意見陳述で、「国策捜査そして国策逮捕、国策勾留は絶対許せません。本質的な国有地(売却)等、忖度(そんたく)の問題から目をそらし、目くらましをしている」などと検察を批判。「りんと咲く 日(ひ)の本(もと)一の 夫婦花(めおとばな)」という一句で発言を結んだ。(米田優人)