川崎市多摩区の路上で19人が殺傷された事件で、刃物で襲ったとされる岩崎隆一容疑者(51)=直後に自殺=の周囲からは携帯電話やパソコンが見つかっておらず、同居する親族と会話をほとんど交わしていなかったという。「他人との接点が見当たらない」。神奈川県警の捜査関係者はそう話す。周辺を取材すると、岩崎容疑者が社会的に孤立していた姿が浮かび上がる。
川崎殺傷「1人で死ね」の声 類似事件や自殺誘う懸念も
近所の人や同級生によると、岩崎容疑者は、川崎市の小中学校を卒業。小学校の時に同級生だった男性(51)は「おとなしくて気が弱いが、話してみると良い子だったという印象がある」と振り返る。高校1年生の時、川崎市麻生区内の駅前で偶然会うと、岩崎容疑者は「職業訓練校に通っている」と話したという。
その後の岩崎容疑者の生活ぶりは明らかになっていない。近所に住む70代の男性は、岩崎容疑者が10代後半の頃から姿を見なくなったが、数年前に、自宅から出てきた姿を見たという。「白髪で当時の面影はなかった。戻って来たんだなと思った」
川崎市は、同居していた高齢の伯父夫婦や親族から2017年11月から今年1月まで相談を受けていた。同市麻生区の自宅に夫婦の介護サービスが入った場合に、岩崎容疑者がどう反応するかを心配していたといい、岩崎容疑者は長期にわたって就労せず、伯父や伯母とほとんど会話がない状態だったという。
捜査関係者によると、事件後、県警が夫婦に岩崎容疑者の身元を確認しようとした際、接点が薄いため、岩崎容疑者の顔だけでは判断ができなかった。県警は最終的に、自宅などに残された指紋で本人確認をしたという。行きつけの店なども確認できていない。
県警は29日、岩崎容疑者の自宅を約7時間にわたって家宅捜索。ポータブルゲーム機やソフト、ノートなど数十点を押収したが、携帯電話、パソコンはなかった。事件当時も、携帯電話は所持していなかったという。
一方、岩崎容疑者のズボンのポケットからは現金約10万円が見つかったといい、県警は今後、口座の入金記録などから、職歴などを調べる方針。
岩崎容疑者は28日朝、刃渡り約30センチの柳刃包丁を両手に持ち、バス停で私立カリタス小学校の児童や保護者を次々と刺したとされる。同小6年の栗林華子さん(11)と別の児童の保護者で外務省職員の小山智史(おやまさとし)さん(39)が死亡し、同小の児童17人と保護者の女性(45)が負傷した。