大阪市で2018年、車を運転中に低血糖症の影響で意識障害に陥り、前方の車に衝突して運転手の女性にけがを負わせたとして、危険運転致傷罪などに問われた30代の男性に対し、大阪地裁の荒井智也裁判官は30日、「意識障害に陥るのは予見できなかった」などとして無罪を言い渡した。
1型糖尿病の血糖値、新薬と測定器でコントロール
男性は18年1月、低血糖症の影響で正常に運転できなくなる恐れがあるのに軽ワゴンを運転して意識障害に陥り、大阪市港区で前方の乗用車に衝突。女性に10日間のけがを負わせたなどとして起訴された。
判決は、男性は7歳で1型糖尿病と診断されて以降、初期症状を感じても適切に管理して、意識障害に陥ったことがなかったと指摘。「当日も糖分補給し、正常な運転に支障が生じるおそれがあると認識していなかった」として危険運転致傷罪の成立を認めなかった。さらに検察側が「低血糖症の初期症状である足のけだるさを感じたのに運転をやめなかった」として、予備的に起訴内容としていた過失運転致傷罪についても「一足飛びに低血糖症に陥るとの認識はなく、予見可能性はなかった」と退けた。
荒井裁判官は判決後、「自然災害のような状態だったと思いますが、その結果車がコントロールを失って周囲の人を巻き込むことは怖いことなので、無理をせずに生活してください」と男性に説諭した。
弁護人は判決後、「1型糖尿病への適切な理解と判断がされた当然な判決」と話した。(多鹿ちなみ)