日本陸上競技連盟は30日、中高生の長距離選手に対する鉄剤注射の不適切な使用が後を絶たない問題に対処するため「不適切な鉄剤注射の防止に関するガイドライン」を発行した。貧血への処置としての安易な鉄剤注射が人体に危険なことを説明したうえで、今冬の全国高校駅伝から全出場校に選手の血液検査などの結果提出を義務化。虚偽申告や異常値など鉄剤注射の不正使用が疑われる場合は、ヒアリングのうえで、出場停止や順位剝奪(はくだつ)などの罰則の可能性を明記した。
日本陸連は、数年前から不適切な鉄剤注射の使用に警鐘を鳴らしてきたが、罰則規定の適用にまで踏み込んだのは初めて。
日本陸連の尾県貢専務理事は「若い選手を取り巻く環境は危機的状況と言わざるを得ない。この問題は指導者、保護者、医者など選手を取り巻くすべての関係者に課された重大な問題ととらえなければ選手の未来を守ることはできない」とコメントしている。
中高の陸上長距離・駅伝の強豪校では、選手の体重を管理するため食事量を制限するケースが多い。その結果、選手に貧血が生じ、応急対処するため、血液中で酸素を運ぶ赤血球の材料である鉄を血中に直接注射する手法が横行。鉄の毒性から、内臓疾患や骨がもろくなるなど様々な悪影響を引き起こす可能性が指摘されている。(酒瀬川亮介)