出版不況の中、全国の書店に本を届ける取次会社が苦境に陥っている。業界最大手が昨年度決算で19年ぶりの赤字となるなど、流通構造の変化に対応が追いついていない。日本の出版文化を支えてきた流通網がほころび始めている。
今年4月、ある出版社が公表した試みが業界内で話題を呼んでいる。自社の利益を削って、取次会社や書店の取り分を増やそうというのだ。
歌人で作家の故辺見じゅんさんが設立した幻戯(げんき)書房(東京)。常駐のスタッフは社長を含めて3人だ。手仕事の香りが残る丁寧な造本がなされ、読売文学賞など権威ある文学賞にも数々の書籍が選ばれてきた。
書籍の定価に対する卸値の掛け…