老後の生活費が2千万円不足するとした金融庁の報告書をめぐり、根本匠厚生労働相は14日の閣議後記者会見で、「厚労省として、(月)5・5万円の不足がある、生涯2千万円不足していると説明したことはない」と述べた。
厚労省の課長は報告書を作った金融庁の審議会で、主に年金で暮らす高齢夫婦の家計について説明。総務省の家計調査を引用し、「実収入と実支出との差は月5・5万円程度」と示した。金融庁は、このデータをもとに「毎月の赤字額は約5万円」で、30年間で2千万円が不足するとの報告書をまとめた。
審議会での課長の説明について、根本氏は会見で「『貯蓄を5万円程度活用して(老後生活は)営まれている』と説明したが、『5・5万円の不足がある』という説明はしていない」と釈明。収支差5・5万円を埋めるために貯蓄を取り崩して対応していると説明しただけで、「生活費の不足」とは位置付けていないとの主張だ。「報告書は単純な議論を行い、世間に著しい誤解や不安を与えた」との批判も口にした。
政府は「政府の政策スタンスと異なる」として正式な報告書としては受け取らない立場を取るが、野党は報告書の元データを厚労省が示したことを踏まえ、「報告書は政府のスタンスと何がどう違うのか」と追及している。