豊後(今の大分)を中心に九州北部を席巻した戦国大名、大友家を舞台にした作品を書き続ける作家がいる。昨年デビューした赤神(あかがみ)諒(りょう)さん(47)=東京都。弁護士、大学院教授という多彩な顔も持つ、自称「ブレーク寸前作家」は、なぜ大友家に注目するのか。
最新作『戦神(いくさがみ)』(角川春樹事務所)は、連戦連勝で「鬼」と呼ばれた猛将、戸次(べっき)鑑連(あきつら)(立花道雪)が主人公。体が不自由になっても輿(こし)に担がれて出陣し、主君大友義鎮(よししげ)(宗麟)にしばしば諫言(かんげん)した逸話で知られる人物だ。「泣ける小説をめざしました。90点を超えた自信があります」と赤神さん。
鑑連の出生譚(たん)が壮絶だ。父親家(ちかいえ)が、養子にした主君の子を戦場で失ったため、そのとがを母お梅が負い自害する。腹から赤子を取り出した父は、こんな理屈で許しを請う。「お梅は死んで鬼となり申した。されば、鬼より生まれし赤子は鬼の子にして、人に非(あら)ず。(中略)人に非ざれば、死を賜る理由はどこにもござるまい」。赤子は長じて幼なじみの娘と結ばれ、戦功を次々上げるが、過酷な運命が待ち受ける。
「鑑連は一つの主家に仕え、下半身不随になっても戦場に赴いた魅力的な人物。自分がほれこめる人物でないと(執筆の)情熱が続きません。前半生はほとんどわかっていないので、書きたい放題に書けました。9割はフィクションです」
京都市の出身。英文学を専攻し…