不動産投資向け融資で不正が多数発覚したスルガ銀行の株主総会が26日、本店を置く静岡県沼津市内で開かれた。開始直後から有国三知男社長への「やめろ」コールが湧き起こる中、有国社長以外の役員が交代する新体制が正式に決まった。
スルガ銀、なお残る創業家の呪縛 泥沼の法廷闘争も
沼津市内の会議施設には数百人の株主が詰めかけた。総会は午前10時、冒頭から手拍子と大合唱に包まれ、異様な雰囲気で始まった。スルガ銀の融資でシェアハウスなどを買い、返済困難となった物件オーナーの株主も200人ほどいたという。
出席者らによると、有国社長が総会の議長を務め、業績や不正の再発防止策などを説明した。だが、
「有国(社長)、やめろ!」
「議長(有国社長)は交代しろ!」
延々と続くそんな怒号でほとんど聞き取れなかったという。スルガ銀を支持する株主も一定程度はいたが、批判的な株主の声のほうが大きかったようだ。
有国社長が不正の責任を問われ、株主から損害賠償請求訴訟を起こされていることもあり、「議長の交代」を求める声は多かったが、いずれも有国社長が退けたという。
質疑の時間になると、怒号はいったん収まった。
静岡県内の事業者だという株主からは「地元の地域をないがしろにしてきた」との声が上がった。
多くの会社の株主総会に出席する「総会マニア」を自称する男性株主はこう発言した。
「こんなに怒号の飛ぶ元気な総会は久しぶり。意見を聞かず、この銀行は大丈夫なのかと感じる」
スルガ銀のキャッチコピー「夢先案内人」について、ある株主が「現実は夢というより地獄(へ案内しているの)ではないか」ときくと、有国社長が「不快に思われるのは事実。早急に対応したい」と答える一幕もあったという。
新生銀行や家電量販大手のノジマとの業務提携も報告された。ただ、不動産投資向け融資に代わる事業の柱は見当たらず、新たな事業モデルは今もまだ定まっていない。
総会開始から3時間後、質問を求める声が多く残るなか、議案は採決された。有国社長が留任し、ほかの取締役5人(うち4人は社外)全員が退任、佐川急便を傘下に持つSGホールディングス取締役の嵯峨行介氏ら社外4人を含む取締役7人の新体制を正式に決議した。
総会終了後、数年前に株式を買ったという男性株主(62)は「不正には驚いたし、損もした。スルガ銀の釈明は形式的で物足りなかった」。三島市の男性株主(67)は「株価は買ったときの6分の1だ。具体的な再建策を聞きたかったのに聞けなかった。有国社長は旧経営陣の一員であり、シェアハウス問題にけりをつけて退任すべきだった」と話した。(岡田和彦、藤田知也)