日本が国際捕鯨委員会(IWC)を脱退し、31年ぶりの商業捕鯨に踏み出した。「日本の鯨食の文化を守る」と関係者は意気込むが、国際社会は反発し、外交上のリスクも抱える。肝心の鯨肉の需要も尻すぼみで、「商業」の名を借りた国の補助金頼みの「官製捕鯨」になりかねない。
1日午後5時ごろ、北海道・釧路港に、捕鯨船からクレーンでつり上げられたミンククジラ2頭が初水揚げされた。
1頭は体長約8・3メートルで、体重約5・6トン。日本小型捕鯨協会の貝良文会長によると、「ミンククジラとしては最大級」という。「今日は最高な一日だった。31年間辛抱したかいがあった。皆さんにおいしいクジラを召し上がっていただきたい」と話した。
この後、クジラは約15キロ離れた加工場に運ばれた。清酒を振りかけて清める「初漁式」や計測などを済ませ、解体処理が始まった。早ければ4日にも店頭に並ぶという。
「捕鯨業の発展に努めていく」
沖合操業の基地・山口県下関市。1日朝、約200人が集まった出港式で、3隻の捕鯨船団の総括責任者、恒川雅臣さんは決意を語った。
下関は江戸時代からクジラの流通拠点で、戦後の食糧難の時代は関連の加工業や飲食店で街はにぎわった。だが現在は活気が失われ、商業捕鯨再開への期待も強い。出港式では前田晋太郎・下関市長が、「安定的な陸揚げや新たな産業振興、観光振興、さらなる経済の活性化を図るための取り組みを推進する」と述べた。
商業捕鯨の再開は、業界にとって「30年来の悲願」(前田晋太郎・山口県下関市長)だ。昨年末に政府が再開方針を決めると「早く捕獲枠を公表して欲しい」との要望がわき起こっていた。だが、捕獲枠が業者に通知されたのは出港直前の1日午前8時。水産庁は「100万通り以上の試算が必要で時間がかかった」とする。だが、2週間前には捕獲枠は固まり、首相官邸に報告していた。
6月28~29日に主要20カ国・地域(G20)首脳会議が大阪市であり、英豪など反捕鯨国トップが出席。この場で反発が起きないよう公表を先送りしたのだ。
国際社会の反応を気にかけながらの再開となったが、反捕鯨団体などからは批判の声が相次いだ。
南極海での日本の調査捕鯨への妨害を繰り返してきた反捕鯨団体シー・シェパード豪州支部のジェフ・ハンセン代表は1日、「クジラやイルカの殺害に対する闘いに今後も焦点を当てる」との声明を出した。
IWCの本部がある英国では6月29日、ロンドン中心部で動物保護団体「ボーン・フリー財団」の関係者らが企画した抗議デモがあり、「捕鯨をやめよ。さもなくば(東京)五輪をボイコットする」などと訴えて練り歩いた。英紙タイムズは29日付で「恥ずべき瞬間」と題した社説を掲載した。
国際社会でのリスク
国際社会の反発に加え、商業捕鯨を続けるには「二つの外交リスク」も潜む。
一つが、日本も批准する国連海…