ホラーやポルノなど大胆な上映作選びで知られるカナザワ映画祭で、今年の自主映画コンペティションのグランプリ受賞者に200万円が贈られる。出資する地元商店街は「新人監督に次回作の制作に使ってもらう」と熱い思いを込める。自主映画の祭典では異例の額だ。
国の特別名勝・兼六園や金沢21世紀美術館から歩いて10分、繁華街の真ん中に竪町(たてまち)商店街はある。
明るい石畳が続く約430メートルの両側に、セレクトショップやジュエリー専門店、カフェなどが並ぶ。宿泊施設を営み、商店街の振興組合理事も務める細川博史さん(41)は「若者が創業の地として選んで発展してきた」と話す。
ただ、北陸の「ファッションストリート」として知られてきた商店街も近年は少し元気がない。北陸新幹線の開業前に開発が進んだ金沢駅前に客足が分散。組合によると、加盟店舗は2007年度に194あったが、18年度は約30減って165になった。
個性あるアーティストが集まる商店街として再び活性化を図ろうとしていたとき、細川さんが、カナザワ映画祭を主催する一般社団法人「映画の会」代表理事の小野寺生哉(いくや)さん(42)から、「映画がヒットしても監督の収入に結びつかないのが現実」と聞いた。
細川さんは「若者がチャレンジしてきた商店街として、映画界に挑む若手アーティストを応援したい」。カナザワ映画祭の名物企画である自主映画の新人発掘コンペティション「期待の新人監督」のグランプリ受賞者に、次回作の制作支援金を出そうと考えた。
有名な「ぴあフィルムフェスティバル」のグランプリ受賞者への副賞は100万円。これに対抗し、思い切って200万円にした。小野寺さんは「出来上がった作品は、金沢をはじめ全国で上映して、チケット販売の収入は監督に還元したい」と話す。
4代前から商店街で商売をして…