神戸市長田区で2014年に小学1年の女児(当時6)を殺害したとして、殺人などの罪に問われた君野(きみの)康弘被告(52)について、一審の裁判員裁判の死刑判決を破棄し、無期懲役とした二審判決が確定する。最高裁第一小法廷(山口厚裁判長)が1日付の決定で、検察側の上告を棄却した。
09年にスタートした裁判員裁判で、一審の死刑判決が二審で無期懲役となった例はこれまでに5件ある。今回の決定により、うち4件は二審判決が確定することになる。残り1件は、最高裁で審理が続いている。
君野被告は、わいせつ誘拐や死体損壊・遺棄の罪にも問われた。第一小法廷は決定で、殺害の計画性がなく、他人の命を奪った前科もない点を考慮し、「生命軽視の姿勢は明らかだが、甚だしく顕著だとまでは言えない」と指摘。「究極の刑罰である死刑は慎重に適用しなければならないという観点と公平性の確保を踏まえ、死刑の選択が真にやむを得ないとまでは言い難い」と判断した。5人の裁判官の一致した意見。
一、二審判決によると、君野被告は14年9月、女児に「絵のモデルになってほしい」と声をかけ、わいせつ目的で自宅に誘拐。誘拐の発覚を免れるとともに、遺体にわいせつな行為をしたいと考え、首をロープで絞め、首の後ろを包丁で刺して殺害した。遺体は切断してポリ袋に入れ、近くの雑木林に遺棄した。
神戸地裁の裁判員裁判は16年の判決で「殺害を決意したのは自宅に誘い入れた後」として計画性のなさを認めたものの、「殺人の動機、態様だけでも生命軽視の姿勢が甚だしく顕著だ」として死刑を言い渡した。この判断について、大阪高裁は17年の判決で「計画性のなさを不当に軽視した」と指摘。性的な目的で1人が殺害された事件では、計画性がなく、性的被害も伴わず、同種の前科がない場合は死刑が回避されているという量刑傾向を踏まえ、無期懲役とした。
検察側は上告趣意書で、君野被告が抵抗されずにわいせつ行為をするために殺害しており、「偶発的とはいえない」と主張。過去のわいせつ目的の殺人事件で、被害者が1人で計画性がないケースでも死刑が3件で確定している点も挙げ、「計画性がなければ死刑の選択は許されないかのような誤解が独り歩きすることは許されず、(事件の性質を)総合評価すべきだ」と訴えていた。
最高検の和田雅樹・公判部長は「主張が認められなかったことは誠に遺憾だが、最高裁の判断なので真摯(しんし)に受け止めたい」とコメントした。
■死刑の「先例重視」…