長時間のデスクワークで腰にかかる負担を少なくする健康器具「フワット」(重さ1・2キロ)を、佐賀大学が開発した。腰痛持ちの准教授と手先が器用な学生が協力して製品化。一般への販売をめざすクラウドファンディング(CF)では、約2カ月で280万円の目標額を達成するなど、多くの反響を呼んでいる。
「フワット」の仕組みはこうだ。まず太いベルトのようなパッドを胴体に巻く。パッドを支える金属のフレームが付いていて、椅子に座るとフレームの下部が先に座面に着いて、お尻が軽く浮いたようになる。自分で椅子のひじ掛けに手を置いて体を支え、腰を浮かせているのと同じような状態を維持できる。
手がけたのは佐賀大理工学部の4年山城佑太さん(22)と中山功一准教授(41)。きっかけは、中山准教授のひどい腰痛だ。学生時代からの腰の不調が、大学での長時間にわたる事務作業で悪化し、座るのがつらくて寝ながら仕事をしたこともあったという。
会議で椅子に座るときは、腕を使って腰を浮かすようにしていた。「腕の役割を果たす器具をつくれないか」と試作。第1号は塩ビ製の水道管を服のベルトに取り付けるものだった。
ものづくりが得意な山城さんが加わり、開発は本格化。3Dプリンターで部品をつくったり、パッドを手縫いで自作したりと試行錯誤を重ねた。6代目の試作品は昨年、福祉機器コンテストで優秀賞に選ばれた。腰痛に悩む人たちから「自分の体形に合うものがほしい」との声が相次いだ。
期待に応えようと、5ミリ単位で高さを調整できるように改良。パッドは通気性の良い素材を使い、洗濯もできるようにした。よりコンパクトな設計にすることで、上着の下に付けても目立たなくなるようにした。
フワットを装着したまま飛行機や新幹線で出張に行くこともあるという中山准教授は「使い始めてから腰の不安を気にせず仕事に集中できるようになった。もう手放せません」と話す。
4月から始めたCFでは24時間で約100万円が集まった。佐賀県内のほか、東京でも体験会も開いてPRしてきた。山城さんは「サラリーマンや子育て中の人、高齢の方までそれぞれニーズがある。もらった声を今後も製品に生かしていきたい」と意気込む。
定価3万6千円で、10月以降の販売を予定している。問い合わせは研究室内の専用ダイヤル(0952・20・4730、留守電対応)へ。(福井万穂)