ポスターと斎藤邦晃係長=2019年7月4日午後3時29分、長崎市尾上町、横山輝撮影
[PR]
長崎県警が防犯を呼びかけるポスターをつくった。ラグビーワールドカップ(W杯)にちなんだものだが、そこにはある仕掛けが隠されている。「地味すぎる」と職員にいわせた謎解きの「カギ」とは?
鍵のかけ忘れや差しっぱなしによる空き巣、自転車盗などの被害を防ぐための啓発ポスター。登場するのは今秋のラグビーW杯で長崎に合宿拠点を置くスコットランド代表チームだ。
ポスターの謎解きのカギ「1KA」=2019年7月4日午後3時42分、長崎市尾上町、横山輝撮影
紺色のジャージー姿で躍動する筋骨隆々の男たち。世界的名手のスチュアート・ホッグ選手らが両手で抱えて走るのは楕円(だえん)のボールではなく、1メートルはあろうかという金色の巨大な鍵だ。
ポスター上にある鍵は6本。ここに「謎かけ」が隠されている。
ポスターの謎解きのカギ「2GI」=2019年7月4日午後3時42分、長崎市尾上町、横山輝撮影
6月下旬のある日、県警の廊下に張り出されたポスターを目にした30代の女性課員は「え……」と漏らしてポスターを凝視。10秒後、「あ、わかった!」と笑顔を見せた。
ポスターの謎解きのカギ「3KA」=2019年7月4日午後3時42分、長崎市尾上町、横山輝撮影
デザインした生活安全企画課の斎藤邦晃係長(37)は「謎が解けたときのちょっとした喜びがあったほうがいいかな、と思って」と工夫した理由を話す。鍵に書かれたアルファベットを番号順につなげて読むと、県警が伝えたいメッセージができあがる。
「カギかけにTRY」
ポスターの謎解きのカギ「4KE」と「5NI」=2019年7月4日午後3時42分、長崎市尾上町、横山輝撮影
ポスターには「外出時にロック」「自転車にはツーロック」など、赤いゴシック体の標語も躍る。
ポスターの謎解きの最後のカギ「TRY」。6本の文字をつなげた答えは「カギかけにTRY」だ=2019年7月4日午後3時42分、長崎市尾上町、横山輝撮影
生活安全企画課によると、2018年に県内で起きた空き巣など住宅への侵入盗、自動車やバイクなどの乗り物盗の認知件数は557件。そのうち無施錠、または鍵の取り忘れによるものが415件と全体の74・5%だった。16年以降、3年連続で70%を超え、高い割合で推移している。
ラグビースコットランド代表が登場する長崎県警の啓発ポスター
斎藤邦晃係長(左)=2019年7月4日午後3時36分、長崎市尾上町、横山輝撮影
斎藤係長は、生活安全企画課に配属され、ポスターづくりに関わって3年になる。「文字ばかりでは見てくれない」と考え、5歳から始めたラグビーへの思い入れを重ねた。
「ちょっと地味すぎるのでは」と苦笑する女性課員に、「そこがいいでしょ」と斎藤係長は言う。
「大事なのは謎かけじゃなく、鍵かけ。県民でスクラムを組んで実践していきましょう」
ポスターは県内の各警察署や官公庁に掲示される。(横山輝)