第101回全国高校野球選手権群馬大会は8日、上毛新聞敷島球場などで1回戦8試合があった。伊勢崎商は太田に延長十回サヨナラ勝ち。シード校の市立太田は吾妻中央に、利根実は伊勢崎工にそれぞれ逆転勝ちした。実力校の常磐は吉井に序盤から突き放され、初戦で敗れた。
ニュースや動画をリアルタイムで!「バーチャル高校野球」
最後まで誰一人諦めなかった 常磐・植田典純投手(3年)
「狙ったところに球がいかない」
三回表、2死満塁のピンチで継投した常磐の背番号1、植田典純(3年)は苦しんでいた。相手の吉井は初回から打線がつながり、毎回の得点。スタンドやベンチが盛り上がり、押せ押せムードだった。経験したことのない「どっしり重い雰囲気」の中で、持ち味の制球が狂った。2者連続の押し出し四球など、この回に3点を失った。
部員が50人以上いる常磐。植田がエースナンバーを背負って試合に出るのは今大会が初めてだった。昨秋や今春は2桁の背番号。「見返したい」と悔しさを胸に誰よりも走り込み、下半身を強化した。横手投げからの緩急を使った丁寧な投球に磨きをかけ、練習試合でも実績を積み重ねた。
この日も「強気の投球ができて、ピンチにも強い」という金子繁監督の期待を受けて登板した。先発した後輩の木村颯太(2年)から「あとは頼みました」と託されたマウンドだったが、相手の勢いにのまれた。「試合を崩してしまった」と悔やんだ植田。四回以降は本来の投球で立ち直り、味方の反撃を待った。
打線が植田の好投に応えたのは七回。2本の三塁打を含む3長短打で3点を返し、一時は2点差に。しかし継投策にかわされる一方、九回には1点を追加され、最後まで捉えきれなかった。選手たちは試合が終わってもベンチに残り、涙を浮かべてグラウンドを見つめた。
金子監督は「振りが良かった相手打線が上だった」と本塁打を含む12安打を放った相手をたたえた。序盤の失点でチーム全体に焦りがでたという主将の中野凜生(りき)(3年)は「最後まで誰一人諦めていなかった。勝てるチームに仕上がっていた。悔しい気持ちでいっぱいです」と唇をかんだ。(森岡航平)