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新型コロナウイルス感染症の拡大で多くの人が仕事を失ったが、仕事で裁量権をもつことを初めて体験した人も大勢いるだろう。最近の研究によると、仕事のプレッシャーが高くて裁量権が小さい人は早死にするリスクが高いのに対し、仕事のプレッシャーは高いが裁量権の大きい人は、より健康であるだけでなく、より幸福を感じるという。中国日報網が伝えた。
感染症は人々にさまざまなプレッシャーをもたらした。プレッシャーの中には、健康への懸念、家族に関する心配事、隔離で人とのつきあいがなくなったことによる孤独感などもあるが、感染症がもたらした幅広い影響の中ではなんと言っても仕事にかかるプレッシャーの増大が突出している。
このような環境の中、「この仕事は自分の命を縮める」という新たな研究成果がタイミングよく発表された。
米国のノーザンイリノイ大学とインディアナ大学の研究者によるこの研究は、20年かけて収集したデータに基づき、仕事に対する感じ方と死亡年齢との間に関連があるかどうかを分析した。その結果、プレッシャーが高い仕事と裁量権の小さい仕事という2つの要因が死亡率の高さと関係があることがわかった。
この20年にわたって行われた「米国中年調査」は、3つの時期に米国人約3千人を対象に追跡調査を行った。回答者の多くは研究スタート時は40代だった。このほど発表された研究分析データをみると、仕事のプレッシャーが高く裁量権が小さい人の死亡率は、仕事のプレッシャーが低く裁量権が大きい人を43%上回った。
研究の過程で死亡した人の死因はさまざまだ。報告書の共著者であるインディアナ大学ケリー・スクール・オブ・ビジネスのエリック・ゴンザレス・ミューレ助教は、「うつ病になる人は早死にする可能性が(うつ病にならない人より)130%高い。仕事のプレッシャーが高く裁量権が小さくて早死にした人はうつ病にかかっていた可能性がある」と述べた。
ミューレ氏は、「私が言いたいのは、(早死にするリスクが高い)みなさんは驚いて仕事をやめるべきということではなく、社員の労働体験に影響力をもつ人、たとえば会社のリーダーとかマネージャーは社員の裁量権をできる限り高めるべきということ、特に仕事のプレッシャーが高い社員の裁量権を高める必要があるということだ」と述べた。
仕事のプレッシャーを引き下げるといっても常に可能とは限らない。たとえば難しい建築現場や救急診療といった仕事は、本質的にプレッシャーの高い仕事だ。しかし仕事の裁量権が高くなればこうした仕事も引き受けられる。ミューレ氏は、「相対的に簡単な方法は、人々にどこで働くかを自分で決めさせることだ。自宅でもいいし、これまでのようなカフェやオフィス以外の場所でもいい。こうした視点からみると、感染症は物事の進歩を真に後押ししたかもしれない。これまで社員が自分のニーズに基づいて柔軟に働き方を変えるのをよしとしなかった会社は、情勢に迅速に対応せざるを得なくなった。そうした会社は多くの場合、プラスの成果を上げている」と述べた。
その他にも、社員の裁量権を大きくするというやり方がある。特に家ではできない仕事をしている人にはこのやり方が有効だ。ミューレ氏は、「自分のやりたい仕事を選べることは、より高いレベルの裁量権だといえる。自分で決めた優先順位に従って任務を処理できることは、低いレベルの裁量権だ」という。一部のハイテク企業は、社員にチームやプロジェクトを選ばせることができるかもしれない。それほど大きな選択の余地を与えられない企業の場合は、1日または時間ごとに何をするかを社員に選ばせるという形を取ることができるだろう。そしてこうすることで、社員の幸福感が大きく変化する。
ミューレ氏は、「人というものは裁量権があることを好むものだということは、昔から知られていた。健康にプラスになるだけでなく、裁量権をもつ人は満足度がより高く、生産効率もより高いのが一般的だ。自分の意思で動けること、他人にコントロールされないことを望むのは、人として当たり前の願いだ」との見方を示した。
また研究者は、認知力が低くプレッシャーが高い人は死亡率がより高いことに気づいた。
興味深いのは、この研究により、仕事のプレッシャーは高いが裁量権の大きい人は、実際のところ、仕事のプレッシャーが低い(が裁量権の小さい)人より寿命が長いとわかったことだ。彼らは充実したより健康的な毎日を送っているようだった。研究者は、「裁量権が大きければ、仕事上の要求がより厳しくても、体を鍛えたり、外で過ごす時間をもったり、リラックスしたりして、より健康的で楽しい暮らしができるというのが原因の1つではないか」と推測する。(編集KS)
「人民網日本語版」2020年6月17日