楽天の三木谷浩史社長は9日、連結ベースの有利子負債(金融関連事業を除く)が1840億円(10月末時点)にのぼることを明らかにした。多くはTBS株の取得費用だが、三木谷社長は低金利を理由に「全く問題ない」と、財務体質の良好ぶりを強調した。ただ、有利子負債は同日発表した05年1~9月期決算の経常利益245億円の7倍以上にのぼる。財務体質が不安定と見られれば株価が下落し、今後の資金調達を難しくするため、増資を含む楽天の財務戦略が経営統合の行方に大きな影響を与えそうだ。
楽天はTBS株取得のため銀行から1110億円を借りている。金利は公表していないものの、大手行の優良企業向けの短期融資の金利は年0.7%程度のものがある。楽天も同程度で調達し、TBS株取得費用の金利負担は年間7億~8億円とみられる。
一方、楽天の保有するTBS株は発行済み株式の19.09%に相当する3627万株。TBSは通期で1株22円の配当を予定しており、楽天が受け取れる配当額は約8億円。三木谷社長が会見で「配当収入のほうが金利よりも大きく、このままでも問題はない」と述べたことと一致する。
だが、銀行からの短期の借り入れは3カ月が基本で、借り換えが認められるには、具体的な返済の見通しを示すのが通例。交渉が長引けば低利であっても銀行への返済時期が迫り、経営統合の戦略の見直しにつながる可能性がある。楽天は長期戦を視野に入れているが、経営統合の行方は依然不透明だ。
また、楽天はこれまでM&A(企業の合併・買収)の後に、増資で財務体質を改善してきた。ただ、今回は増資観測が高まるたびに株価が下落した。時価総額が資金調達の信用力につながる楽天にとって、TBSとの統合交渉が長引けば財務戦略が自在に行えず、成長の足かせになりかねない。【TBS問題取材班】
◇三木谷社長と一問一答
--資金調達のための増資は、報道されたためできなくなったのか。
国重惇史副社長 市場に大きな影響があるので、コメントできない。
--文書のやりとりばかりで、意見交換する場がないまま終わるのではないか。
国重副社長 TBSの幹部と2回会って話をしている。今後も会って意見交換しようと訴える。
--TOBや株の買い増しはしないのか。
国重副社長 TOBは、月末までに(TBSから)回答があるということなので、その前にはしない。買い増しについてはノーコメント。
--TBSが提案を断ったら。
三木谷浩史社長 仮定でコメントはできない。将来に向けて話し合えばいい形になると思う。
--当初、「悠長なことを言っていられない」と話していたが。
三木谷社長 1カ月もたてば人間忍耐力もついてくる。尺は短くもあるし、伸ばすこともできる。柔軟に対応したい。
--長期化による楽天の企業イメージへの影響や、金利負担の財務上の影響はどうか。
三木谷社長 企業イメージに全くマイナスはない。金利負担も配当収入の方が多いので問題はない。楽天の収益性の伸びは、投資家の信頼を得ているので、現在のレベルでは問題のない範囲だ。
--あせりは感じているか。
三木谷社長 あせりは全然ない。