佐和教諭のクラスでは昨年、携帯メールを使う「電子連絡帳システム」を導入した。携帯電話のメールアドレスを登録した保護者に、学校からの連絡やお知らせをメールで送るほか、保護者も子供の欠席届けや相談事などをメールで送れる。林間学校の帰りのバスが早く着いたとき、インフルエンザなどで急に学級閉鎖するときなど、急いで知らせたい時に、電話連絡では保護者が家を留守にしている場合は伝わらない。佐和教諭は、送信メールに、保護者が連絡メールを受け取ったら「受信確認」を返信できる設定にしてメールを送る。「受信確認」の返事が来ない保護者には、勤め先に連絡するなど、確実に連絡できるよう工夫している。
携帯電話を使って「授業の様子を子供の目線で保護者に伝えることができる」と話す佐和教諭
保護者からのメールを受け取れることも父母とのつながりを強めるのに効果的だという。「子供が学校に行きたくないと言っている」「なんとなく様子がおかしい」など、電話では説明が難しいような相談もメールで送られてくるようになった。「今までは、何が起きてるのか言いにくくて、風邪と報告するケースもあったのではないか。メールだと、込み入ったことも書きやすいようだ。子供がどんな状態なのか分かるので、保護者との話もしやすい」と佐和教諭は話す。
アドレスを登録している保護者は8割以上いるが、全員ではないため、今のところ「電子連絡帳」はオプションと考え、これまで通り文書での連絡もしている。今は佐和教諭のクラスだけだが、いずれ全校に拡大したい考えだ。
◇ケータイからホームページを更新 子供たちの様子、保護者に伝える
子供と保護者のつながりを深めようと、昨年から今年7月まで毎日、学校のホームページに「ケータイ日誌」を載せた。学校には5台の携帯電話があり、子供たちが自由に使える。その日の出来事を、携帯電話のカメラで撮影し、簡単な文章をつけて佐和教諭の携帯電話に送る。OKならホームページに掲載される。授業の様子を子供の目線で保護者に伝えることができるし、校外学習や林間学校での子供の様子を、同行した教員が撮影して掲載することもできる。
ゴーヤを育てる学習について掲載したときは、保護者から「ゴーヤの種を見たことがないので、見せてください」というメールが届き、それに応えて、子供がゴーヤの種を撮影して掲載したこともあった。
旭東小では、ほかの小学校との交流学習で、掲示板も使っている。掲示板を利用するにはパスワードが必要で、誰もが見られるものではない。そこで佐和教諭は「掲示板には友達の顔を載せてもいいが、誰でも見られるケータイ日誌には個人が特定できるような写真は載せない。話題も、日誌には誰が読んでも分かる内容を書き、交流学習のときは、その内容を書く。誰に何を伝えるのか、どんな情報を流していいのか、といったことを子供たちに気付かせたい」と話す。
佐和教諭のクラスでは、携帯電話を使う以前から、デジタルカメラで撮った写真について30秒スピーチをさせる授業をしていた。携帯電話を使うと、そこから一歩進んで、誰に向かって情報を発信しているのか、相手を意識させることが出来る。「子供たちが、生活の一場面について発信することで、情報活用能力、ネット上でのコミュニケーション能力が育つ」と佐和教諭は考えている。
◇子供同士のやりとりも
「スゴーイ」「おつかれさま」。陸上大会に出場した友達へのメッセージを黒板に書き込む(佐和教諭提供)
携帯電話の動画メール機能を使い、校外の陸上大会に出場している友達を応援したり、学校からメッセージを送る取り組みも、子供たちに好評だ。これまでは引率する教員が学校に電話をして結果を伝えていたが、携帯電話を使うことで、子供同士で結果を伝え合うことができる。先月、テレビ電話機能と動画メール使って陸上大会をライブ中継したが、学校から大会の様子を見た子供たちは、「スタートの緊張感が伝わってきてどきどきした」「給食中も話題になって盛り上がった」と喜んだという。