福田康夫元官房長官が不出馬を表明したことで、自民党総裁選の焦点は、最有力候補の安倍晋三官房長官と距離を置く勢力の新たな「受け皿」づくりに絞られつつある。第2派閥、津島派の額賀福志郎防衛庁長官の動向が注目を集めるが、派内は同氏の立候補を前提にした「主戦論」に賛否両論があり、意見集約に手間取っている。一方、総裁候補を持たない派閥では安倍氏支持の動きが加速してきた。「しょせん2位争い」との冷めた見方も漂う中、「非安倍」勢力結集の難しさが早くも浮かんだ。【中川佳昭、堀井恵里子】
額賀氏は25日、参院津島派の実力者、青木幹雄参院議員会長、片山虎之助参院幹事長と対応を協議した。同派の茂木敏充元科学技術担当相らは自派候補を擁立しなければ同派が「草刈り場」になりかねないと懸念、額賀氏擁立に傾斜している。総裁選で2位を確保、新総裁下での人事や「次の次」につなげる狙いだ。
一方で、同派の久間章生総務会長は同日、中堅の山口泰明副内閣相に「選挙は勝てないと仕方がない」と語り、擁立へ消極姿勢をにじませた。安倍氏の支援議連の発起人である山口氏や桜田義孝衆院議員ら中堅議員を中心に、安倍氏支持の動きも活発になっている。額賀氏は同日夜、茂木、山口、桜田3氏と会ったが「一致した行動を取りたい」と申し合わせるにとどまった。こうした中でカギを握るのは、青木氏の判断だ。
すでに出馬を表明している麻生太郎外相や谷垣禎一財務相にとっても、福田氏不出馬に伴う「福田票」獲得が焦点となる。ただ、谷垣、麻生氏とも小泉政権の閣僚で「反小泉」ではないため、福田氏支持層の吸収は限定的い、との見方は根強い。額賀氏と並び擁立論がある与謝馨金融・経済財政担当相も出馬への慎重姿勢を崩していない。
総裁候補を持たない丹羽・古賀派や伊吹派では、安倍氏支持議員の動きが活発化し、派閥領袖の意向に添う空気は希薄だ。このため、福田氏擁立で「反小泉・非安倍」の枠組み作りを模索していた古賀誠元幹事長も講演で「候補者がたくさん出ればいいというものではない」と発言。伊吹派議員も「伊吹派はほぼまとまって安倍氏支持で固まった」と語った。
毎日新聞 2006年7月26日