西武裏金事件で揺れる日本プロ野球組織(NPB)は13日、都内で代表者会議を開き、ドラフト制度改定で一度は合意していた希望入団枠存続・現行制度維持を白紙撤回し、労組・日本プロ野球選手会との構造改革協議会で伝えた。同枠存続を主張していた巨人が撤廃に方針変更し、新たにFA制と連関させたウエーバー制を提案。今後は枠撤廃を要望するアマ側との協議を経て、21日にも希望枠撤廃が決まることになった。
ドラフト制度は希望枠撤廃の方向が固まった。1993年の逆指名導入以来、自由獲得枠、希望入団枠と名前を変えて存在していた制度が14年ぶりに姿を消す。球界を揺るがす裏金問題が12球団の姿勢を正した。
希望枠存続を強く主張していた巨人が態度を変えた。12日に渡辺恒雄球団会長が希望枠撤廃論に反対する意向を示した矢先だが、清武英利球団代表は「直接聞いたわけではない。柔軟な姿勢でいる」と軟化姿勢を示し、代表者会議で「希望枠をなくした場合の方法を議論しなくてはいけない」と、自称「日本版ウエーバー制」という新たな提案を行った。
新ドラフト案はチーム成績に応じて順に指名する。「育成と即戦力に分けた考え方」で高校生は首位から成績順、大学生・社会人は最下位から成績逆順と分ける。05年のドラフト制度改定で構造改革ワーキンググループ(WG=作業部会)として提案した通称「クロス・ウエーバー方式」だ。
FA制と連関させる。「入り口の自由(希望枠)をなくすのだから出口の自由(FA権)を与えればいい」。現行一律9年のFA権取得年限を「年俸が高騰する前に市場に出して活性化させる」と国内5~6年に短縮。大リーグへの流出防止に海外は9年を維持する。さらに人的補償も廃止する。清武代表は「ぜひ、これを通したい」と訴え、選手会との協議でも提案した。
しかし、FA短縮が大きなカギとなる。この日、巨人の提案について具体的討議は行われなかったが、難色を示す球団は多い。野崎勝義・選手関係委員長(阪神連盟担当)は選手会に対し「一度合意した希望枠存続は白紙に戻した」と回答したが「枠存続の声もある」とも話している。
「不祥事を起こした以上、さらにアマ側の意見を聞いていかねばならない」と野崎委員長。一度はアマ側の拒否で破談となった16日のプロ・アマ協議会開催を要望。同じく希望枠撤廃を要望する高校・大学・社会人幹部と会談する。21日には代表者会議を開き集中討議。センバツ高校野球開幕前日の22日をめどに「何とか結論を出したい」としており、流れは撤廃で固まった。
スポーツニッポン 2007年3月14日