原発の使用済み核燃料が、想定される再処理能力を超えるペースで増え続けている。全国53基の原発サイト(敷地)や青森県六ケ所村の再処理工場にある貯蔵プールの保管能力では間に合わない状況だ。青森県は先月、むつ市に“一時保管”を目的とした中間貯蔵施設の建設受け入れを決めたが、「問題の解決にはほど遠い」とも指摘される。使用済み核燃料の今に迫った。【中村牧生】
◇100万年間は密封管理必要
原発は燃えるウラン235が核分裂する際に生じる熱を利用して発電しているが、標準的な110万キロワット級の原発で毎年約30トンの使用済み核燃料が発生する。
使用済み核燃料は、(1)ウランが燃えて出来た核分裂生成物(死の灰)(2)燃え残りのウラン(3)プルトニウム--の三つが混然一体となっている。ここから化学処理によって(2)と(3)を取り出し再び燃料とするのが「再処理」で、残った(1)が高レベルの放射性廃棄物となる。
京大原子炉実験所の小出裕章助手は「死の灰を無害化できる見通しはなく、人類の生活から隔離しておくしかない。放射性物質の半減期などを考慮すると100万年は密封状態で管理することが必要だ」と話す。
◇国内で再処理に基本路線を転換
使用済み核燃料は原子炉の隣にある貯蔵プールに仮置きされ、プール自体が満杯になる前に搬出されるシステムになっている。98年までは英仏の再処理工場へ搬出していたが、国は00年原子力開発利用長期計画で「国内での再処理が原則」との基本路線を示し、国外への持ち出しを中止した。
経済産業省資源エネルギー庁の桜田道夫・核燃料サイクル産業課長は「使用済み核燃料の海上輸送には核物質防護上の問題や沿岸諸国の反対があったのも事実だ」と話す。
◇搬出されないと3~5年で満杯
電気事業連合会によると、国内の使用済み核燃料は9月末現在で1万2980トンに上る。再処理工場で貯蔵されている分を除く計1万1570トンが各原発サイトにあり、これは貯蔵可能な全容量の64・8%を占める。
各原発の状況を見ると、1基あたり年間20~40トンの使用済み核燃料が発生することから、このまま搬出されないと各原発とも3~5年で満杯となる。そうなれば運転中止に追い込まれる原発が出てくる可能性がある。
また、現在、六ケ所村の再処理工場は1610トンを受け入れる余裕はあるが、全53基の発生量が年間約1000トンに上るため、その全量を再処理工場に持ち込むとすれば、こちらも1年半分で満杯だ。
◇六ケ所村工場も処分しきれぬ量
ところで、六ケ所村の再処理工場は、07年5月に本格稼働の予定。同工場は、年間約800トンの使用済み核燃料を処理して、新たな燃料を作る能力があるが、予定通り稼働しても、全原発からの使用済み核燃料の発生量が年間1000トンのため、どうしても年間200トンは処分しきれずに貯(た)まる計算だ。仮に稼働時期が遅れれば、それだけ深刻さは増す。
使用済み核燃料をとりあえず仮置きする中間貯蔵施設を、国が切実に求める背景には、こんな事情がある。
◇中間貯蔵施設、立地活発化へ
「中間貯蔵施設」建設のため、東京電力と日本原電が9日に設立した新会社は来年度中にも国に設置許可を申請。約5年後の操業開始を目指す。電気事業連合会は「具体的な話は聞いていないが、貯蔵施設は各電力会社の最重要課題の一つであり、さまざまな形で立地活動に取り組んでいる」(広報部)と、各電力会社が、建設を計画していることをにおわせる。
経産省原子力安全・保安院は「貯蔵施設は、原発施設で使われるような動く機器が全くないので安全性は高い」と話すが、小出さんは「それなら地方に押しつけずに、電気を大量消費する都会が受け入れるべきだ。例えば経産省や東京電力本店の地下に造って監視する方が確実だ」と訴える。