小泉純一郎首相の私的諮問機関「皇室典範に関する有識者会議」が意見一致をみた「長子優先」での皇位継承や女性皇族の宮家創設は、安定的な皇位継承を最重要課題としてきた議論の末の当然ともいえる結論だ。会議は既に女性・女系天皇の容認で一致しているが、天皇に近い立場にある内親王に「自由意思で皇族の立場を離れることを認めない」など女性皇族の処遇が、これまで差のあった男性皇族と同じに位置づけられたのが特徴でもある。【遠山和彦】

　先月２５日に「女性・女系天皇」を容認した有識者会議の継承順位をめぐる議論は、伝統的な男系男子の考えを取り入れたとも言える「兄弟姉妹間での男子優先」についても「出生順に決まる安定性」を考慮して退けた。さらに、女性皇族が皇族以外の男性と結婚した場合でも、皇族を離れず宮家創設への道を開いたのも、皇位継承者をできるだけ増やす「安定継承」の考え方からだ。

　ただ、皇族の範囲を限定しない現行の永世皇族制を認めながらも「皇族数が拡大しすぎる」との批判に耐えられるように、皇籍離脱制度を弾力的に運用する形を取った。具体的には、現行の典範では、女性皇族について、結婚したケースのほかに「やむを得ない事情がある場合」や「１５歳以上であれば本人の意思による場合」に、いずれも皇室会議の議決を経たうえで、皇籍離脱を認めている。

　有識者会議の結論は、内親王は親王と「同じ待遇」とし、自らの意思に基づいた離脱ができなくなることを示した。例えば、内親王だった紀宮さまは結婚して皇族を離れたが、会議の結論では、皇族にとどまるとともに、自らの意思での離脱はできなくなる。また、天皇から３世以上離れた「女王」と呼ばれる女性皇族も「王」と呼ぶ男性皇族と同じ処遇とし、結婚しても皇族を離れないが、自らの意思による離脱は認めた。

　最近になって、学識者を中心に男系男子による継承を求める声も上がっている。有識者会議の結論は、来年以降の皇室典範改正をめぐる国会での論議も見据え、女性皇族の立場を男性皇族と同じにすることで「男系男子」と対する「女性・女系天皇容認」の立場をあえて強調しているようにも見える。