小泉純一郎首相の私的諮問機関「皇室典範に関する有識者会議」(座長・吉川弘之元東京大学長)は21日、東京都内のホテルで第16回会合を開き、最終報告書の全容を固めた。女性・女系天皇の容認を決めた後、課題として残っていた皇位継承順位について、直系優先のうえで出生順に定める「長子優先」とすることを全会一致で確認。皇族の範囲に関しては、天皇との世数を限定しない現行の「永世皇族制」の維持を打ち出す一方、女性皇族が宮家を創設することを認めた。
有識者会議は24日、首相に最終報告書を提出する。これを受け、政府は来年の通常国会での皇室典範改正を目指す。最終報告書の方向になれば、皇太子ご夫妻の長女敬宮愛子さまが、皇太子さまに続く皇位継承順位2位になる。
有識者会議は10月25日の第14回会合で、女性・女系天皇の容認で一致。その後、皇位継承順位をめぐっては、直系優先を前提に「長子優先」と「兄弟姉妹間で男子優先」の2案にしぼって議論を進めてきた。
長子優先での決着について、吉川座長は会合後の記者会見で「国民が(皇位継承者を)将来の天皇として成長を見守ることができる。分かりやすくかつ安定した制度だ」と説明。兄弟姉妹間男子優先に対しては「男子の誕生を待つ不確定な時間が長く、好ましくない」と語り、安定性を重視した結果だと強調した。
皇族の範囲では、女性・女系天皇を認めた場合、将来的に皇族の数がかなり増えることも指摘された。しかし、最終的には、皇位継承資格者を安定的に確保するためには世数限定は好ましくないとの考えに集約された。
女性皇族の中で「内親王」は、男性皇族の「親王」と同じ処遇とすることで一致。現行の皇室典範では、女性皇族は婚姻と同時に皇族の身分を離れるが、親王には「独立の生計を営む際」の宮家創設が認められている。一方、内親王や親王妃を除いた女性皇族である「女王」については、意思に基づいた皇籍離脱を認めるという弾力的な運用を打ち出した。
過去に10代8人の女性天皇が即位しているが、いずれも男系で「中継ぎ」的な要素が濃かった。女系にまで踏み込むことには政府・与党内にも異論が残っており、来年の通常国会に向け、調整は曲折も予想される。
一方、吉川座長は会見で、寛仁親王殿下が私的なエッセーで男系男子継承を訴えたことについて議論になったことを認めたうえで「歴史観については当然議論すべきだが、国会ですべきだ」と述べた。【野口武則】
▽親王と内親王 天皇の子や孫にあたる男性皇族が「親王」で、女性皇族が「内親王」。天皇の3世以下の子孫は男性は「王」、女性は「女王」と呼ぶ。現在の皇族では、皇太子さまや秋篠宮さまが親王。皇太子ご夫妻の長女敬宮愛子さま、秋篠宮ご夫妻の長女眞子さま、二女佳子さまが内親王。寛仁親王殿下の長女彬子(あきこ)さま、二女瑶子(ようこ)さま、高円宮妃久子さまの長女承子(つぐこ)さま、典子(のりこ)さま、絢子(あやこ)さまが女王になる。